「なぜ買わなかったか」も可視化 アットコスメ、AIで口コミ分析する新事業 美容特化の強みとは？

美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営するアイスタイル（東京都港区）が新会社を設立した。これまで蓄積してきた口コミデータを活用した新事業を展開するという。

[菊地央里子，ITmedia]

　美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営するアイスタイル（東京都港区）が、CXコンサルティングファームであるNODE（東京都品川区）と新会社・アイスタイルデータコンサルティングを立ち上げた。@cosmeがこれまで蓄積してきた口コミデータを活用した新事業を展開する。

提供：ゲッティイメージズ

　@cosmeの月間ユーザーは1760万人（2024年12月末時点）で、ユーザーが書き込んだ口コミは2190万件（2025年3月末時点）に上る。加えて、運営するEC「@cosme SHOPPING」、実店舗「@cosme STORE」でも、さまざまな顧客データを収集。今回、こうした膨大なデータを統合した統合データ基盤を活用して、データコンサルティングサービスやAI分析ツールを提供する。

アイスタイルが持つデータの特徴（プレスリリースより引用、以下同）

「なぜ買わなかったのか」まで可視化　どうやって？

　データコンサルティングサービスでは、課題の洗い出しから戦略の提案、実行、検証までを一気通貫で支援する。アイスタイルデータコンサルティングの押野卓也副社長は「アイスタイルは美容分野に特化しており、化粧品業界の構造や最新動向、トレンドを把握している。また、コンサルティングの基盤となる顧客データを自社で作成しているため、より高精度な分析や戦略立案ができる」と話した。

　これまでもPOSデータを活用すれば「誰が」「いつ」「何を」買ったかという情報を分析できた。「@cosmeの口コミを組み合わせることで『なぜ買ったのか』『なぜ買わなかったのか』という購買の背景を可視化できる。こうした情緒的な価値も提供できるのが、当社の強みだ」（押野副社長）

　立案した戦略は、口コミデータや売り場ですぐ検証する。押野副社長は「提案した内容が正しかったのか分析を続け、結果や状況によっては戦略をブラッシュアップする」と説明する。活用シーンとしては、マーケティング支援やCRM活用、新商品開発を想定している。

コンサルティング支援事例

　生成AIを活用して@cosmeに投稿された口コミを検索・分析し、マーケティングの意思決定をサポートするSaaS型「@cosme Copilot（コパイロット）」の提供も開始する。@cosmeに蓄積された過去10年分の口コミから、ブランドの現状分析や競合分析、マーケティング施策の振り返り、商品開発などへの活用を想定している。

　口コミ検索や頻出ワードを可視化する分析機能の他、AI自動生成によりペルソナを可視化し、ターゲットユーザーを特定したり、他ブランドユーザーと比較したりできる。対話型のチャット機能も搭載し、作成したペルソナへ質問しながら深掘りすることも可能だ。

@cosme Copilot　イメージ

　プランはライト、スタンダード、ビジネスの3種類で、月額利用料はそれぞれ25万円、55万円、85万円とした。4月中旬から一部クライアント向けに順次提供を開始し、改修やアップデートを実施。2026年1月に正式リリース予定だ。

　アイスタイルデータコンサルティングは、初年度に10クライアントの獲得を目指す。5年後には20億〜30億円の売り上げを見込んでいる。押野副社長は「まずは化粧品など美容業界がターゲットだが、ゆくゆくは保険など別の業界にもアプローチしたい」と意気込んだ。

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