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転職で“リセールバリュー向上”を狙う20代 人材流出を防ぐには、どうすべき?(1/2 ページ)

20代の約3人に1人が、転職潜在層――。若い世代のキャリアに対する意識は大きく変化している。本稿では、待遇面だけでなく、企業文化や成長機会など、若者が企業に求める真の価値や、企業が取り組むべき対策について具体的に提案する。

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 20代の約3人に1人が、転職潜在層――。

 人材サービスのレバレジーズが運営するフリーター・既卒・第二新卒向け就職支援サービス「ハタラクティブ」の調査結果が示すように、若い世代のキャリアに対する意識は大きく変化しています。

 終身雇用制度の崩壊、経済状況の不安定化などを背景に、自身の市場価値を高め、長期的に活躍できる人材になろうとする傾向が強まっているのです。キャリア相談サービスの利用増加も、この傾向を裏付けています。

 本稿では、待遇面だけでなく、企業文化や成長機会など、若者が企業に求める真の価値や企業が取り組むべき対策を具体的に提案します。


若者が企業に求める真の価値とは? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:後藤祐介(ごとう・ゆうすけ)

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レバレジーズ ヒューマンキャピタル事業本部 事業本部長

京都大学を卒業後、大手ゼネコンを経て、2012年にレバレジーズへ中途入社。

現在は「ハタラクティブ」の事業責任者を担うほか、営業システムの構築や教育制度の設計、高校生や企業に向けたセミナー開催など、幅広い業務を担当している。

2020年に中小企業診断士に登録。


「すぐに転職」はしないが…… 水面下で動く20代

 ハタラクティブが2024年6月に実施した調査によると、20代の1割弱(7.8%)が現在転職活動中(以下「転職顕在層」と称する)であることが分かりました。

 「応募や選考はしていないが、情報収集をしている(11.2%)」「転職活動はしていないが、転職を計画している(19.2%)」(以下「転職潜在層」と称する)と回答した割合は、20代の約3人に1人を占めています。


20代の約3人に1人が「転職潜在層」(レバレジーズ提供、以下同)

 ハタラクティブの利用状況を見ても、具体的な転職時期は未定ながらも、将来のキャリアに備えて「キャリア相談」をする人が増えています。

 事実、「すぐに転職したい」という明確な目的ではなく、「キャリア相談」を目的にサービスを利用する人は全体の約4割にも上ります。これは、潜在的に転職を考えている人が一定数存在することを示唆しています。

 このような「転職潜在層」の増加は、終身雇用制度の崩壊や経済状況の不安定化など、企業への依存が難しくなった社会背景が影響していると考えられます。

 さらに、SNSの普及も大きな要因の一つと言えるでしょう。

 他者の仕事内容や収入に関する情報が容易に得られる現代社会では、どうしても他人と比較してしまいやすく、現状への不安やキャリアへの過剰な期待を抱きやすい状況です。特に、収入やスキルといったデリケートな話題は、友人や上司に相談しづらいものです。だからこそ、客観的なアドバイスを求め、転職エージェントに相談する若者が増えているのではないでしょうか。

転職先でも「定年まで就業」する意識はない

 転職を考える若者の増加とともに、若者が企業に求めるニーズも時代とともに変化しています。

 かつては「働きやすい環境」が重要視されていましたが、ワークライフバランスの改善が進んだことで、徐々に「高い収入」を求める声が大きくなりました。近年では、終身雇用制度の崩壊や経済状況の不安定化などを背景に「市場価値の向上」が若者の転職活動における動機の一つとなっています。

 「転職顕在層」および「転職潜在層」である20代の約7割が、自身の市場価値を調べたことがあるという調査結果からも、若者の市場価値への意識の高さがうかがえます。


20代の約7割が自身の市場価値を調べたことがあると回答

 また、20代の「転職顕在層」および「転職潜在層」に対して、現在の転職活動について聞いたところ、6割以上が現在の転職活動は「次の転職を見据えた『転職活動』である」と回答しました。


6割以上が「次の転職」を見据えた上で現在の転職活動をしていると回答

 転職先の企業に定年まで居続ける意識はかなり低く、多くの人がその次のステップでの市場価値向上を見据えた、「キャリアにおけるリセールバリュー」を意識していることが見受けられます。

 まるで自分のキャリアを"商品"のように捉え、その"リセールバリュー"を高め、次の転職市場でより有利な立場を築けるように準備しているかのようです。

 将来を見据え、社内だけでなく社外からも評価されやすいスキルが身につけられるかどうか、つまり、転職市場においても評価される人材へと成長できる環境かどうかを、彼らは重視しているようです。

 社内公募制度の活性化や新規事業へのアサインなど、社員の成長を後押しする企業が、これからの時代に選ばれる存在となるでしょう。

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