Switch2を通じてもたらされる価値
Switch2に加えられた新機能や変更点の意図を考える上で、一度任天堂のルーツを振り返ってみたい。
1889年、山内房治郎氏が京都で創業した「任天堂骨牌」は花札の製造から始まった。当時の花札やカルタは、家族や地域コミュニティーで顔を見合わせながら楽しむコミュニケーションツールだった。
テレビやゲーム機など存在しない時代では、人々はカードを通じて娯楽に興じ、笑顔を交わした。これこそが130年以上もの間「娯楽×コミュニケーション」を提供し続ける任天堂の原点だ。
ビデオゲーム事業が中心となって以降も、任天堂が娯楽だけでなく人と人のつながりを重視していたことは過去のゲーム機やゲームソフト、周辺機器を見ても明らかだ。ビデオゲームは家で一人で遊ぶものという傾向が強くなり始めた1980年代後半から1990年代にかけても、ゲームボーイの通信ケーブルやスーパーファミコンのスーパーマルチタップなど、任天堂は2人以上がリアルの場で集まってコミュニケーションを取りながら遊ぶ環境を必ず用意してきた。
筆者もまた、学校が終わり、ハードとソフトを所有している友人の家に集まり、最大5人でボンバーマンシリーズをプレイした経験があるうちの一人だ。今や日本を代表するコンテンツとなったポケモンの躍進に、この通信ケーブルを通じた交換、リアルでのコミュニケーションが大きく寄与したことは言うまでもない。
Nintendo64の時代では、前世代機から続くマリオカートシリーズに加え、スマッシュブラザーズシリーズ、マリオパーティシリーズなど、複数人で楽しめる名作が次々と誕生した。
現代では複数人でのプレイが前提となるゲームは珍しくないが、それはリアルの場ではなくオンラインでつながることが中心だ。Switch2の仕様を見るに、任天堂はこのデジタル時代において、新たな形で旧世代から続く人々の「つながり」「コミュニケーション」を「娯楽」を通じて実現しようという試みが見て取れる。
そう考えられる理由の1点目は、先述したゲームチャット機能とそれを起動するためのJoy-Con 2のCボタンだ。Webカメラを使用したビデオ通話機能も提供する予定で、離れていても表情や反応を共有できる。
今や小学生から、オンラインで複数人が集まってゲームする時代である。そのニーズに対し、ゲーム機単体で応えることの意義は大きい。単にゲーム機単体でのチャット機能であればPCや他社ゲーム機でも可能だが、Switch2では「Nintendo みまもり Switchアプリ」と連動して利用の制限や条件設定、モニタリング可能な点が特徴である。世界共通のニーズである「親が安心して子どもに与えられる遊び」を意識しているといえる。
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