2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

「失業する!」とAIを恐れる経理に、CFOはどうすべきか

AIエージェントは、財務や会計の分野に大きな変化をもたらす可能性がある。財務・経理社員の中には、こうした自動化を恐れる人もいるようだ。CFOはどう対応していくべきか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
CFO Dive

 AIを巡る議論は依然として活発だが、近年注目されているのがAIエージェントである。このAIは、財務や会計の分野で手間のかかる定型業務の削減に大きな可能性を示している。こうしたツールを効果的に活用するために、CFOには「本質的なマインドセットの転換」が必要になると、EYグローバルおよび米戦略・市場リーダーのマイルズ・コーソン氏は述べている。

 CFOは、単にテクノロジーの導入に前向きになるだけでなく、AIエージェントや他の自動化ソリューションの導入によって、財務機能そのものがどのように再構築されるのかについても考える必要があるとコーソン氏は指摘する。業務の自動化が進む中で、CFOは将来の財務部門の在り方を見据え、変革をリードする立場に立たなければならない。

AIエージェントは「これまでの自動化」とはワケが違う

 「成功するCFOや財務部門にとっての焦点は、こうした自動化の波が押し寄せる中で、商業部門に対してインサイトを提供できているか? 経営判断に関わる対話の一員として早い段階から関与できているか? ということです。私は、そこにこそCFOにとっての大きなチャンスがあると考えています」と、コーソン氏はインタビューで語っている。

 つまり、CFOはAIに業務を任せるだけではなく、その結果生まれる時間と情報を生かし、より戦略的・分析的な役割へと自らを進化させる必要がある。そのためには、組織全体のプロセス設計や人材戦略の見直しも含め、CFO自身が変化のけん引役となる意識改革が不可欠である。

 AIエージェントを組織内にどう位置付けるかを考える際、CFOは従来の技術導入とは異なるアプローチを取らなければならない。

 コーソン氏は、従来のRPAのような技術では「機械に対して、非常に特定のやり方で、非常に特定のタスクを実行させてきた」と指摘する。しかし、生成AI、特にAIエージェントのような新しいツールでは、そのような定型的な思考パターンは通用しなくなってきているという。「今はむしろ思考の視野を広げることが求められている」と、コーソン氏は述べる。

 CFOたちは、特定の業務プロセスを根本から変えてしまう可能性のある技術を財務部門に導入することの影響や意義を慎重に見極めている。こうした技術革新は、単なる効率化にとどまらず、組織構造そのものの再設計を促すものとなり得る。

 一方で、AIエージェントのポテンシャルとリスクのバランスにも目を向ける必要があるとコーソン氏は強調する。特に、導入コストと投資対効果(ROI)の見極めは難しい判断を伴う。

 「技術が日々進化する中で、その恩恵や成果がまだ不確かな段階で、ROIをどう評価するのかがCFOにとっての大きな課題です」と彼は述べる。「投資額は明確に把握できますが、将来のリターンの見積もりには不確実性がつきまとうのです」

 「一部のメリットや将来的な効果がまだ明確でない中で、投資対効果(ROI)をどうやってバランスよく評価すればよいのか?」と、コーソン氏は話す。「投資額そのものは明確に把握できますが、これほどのスピードで進化している技術に対して、その潜在的なリターンをどう見積もるかは、多くのCFOが今まさに直面している課題です」

 投資対効果(ROI)を適切に判断するためには、まずAIを適用すべき「具体的な課題領域」を特定することが不可欠だと、コーソン氏は指摘する。

 また、最適なツールや活用方法を見極めるためには、財務部門とIT部門の密接な連携が欠かせない。AI市場が急速に拡大し、選択肢が増え続けている中ではなおさらだ。米Norwestの最近の調査によると、「CFOオフィス向けソフトウェア」市場にはすでに300社以上の企業が参入しているという。こうした状況下で、適切な選定と戦略的な導入判断がますます重要になっている。

photo
自動化を恐れる組織にしないためには?(提供:ゲッティイメージズ)

 AIと自動化が企業活動にさらに浸透する中で、CFOは「財務人材と組織文化」に対するマインドセットも転換する必要があるとコーソン氏は続ける。

 「人材に対して、その役割がどのように変化し、なぜ今後より興味深く、意義のあるものになっていくのか、そしてビジネスとのパートナーシップや価値創出により焦点を当てる仕事になるのかを伝えられていますか?」と彼は問いかける。

 実際、EYが2024年10月に実施した調査では、従業員がリーダーシップのビジョンと目標を明確に理解している場合、DXの成功率は2倍以上になることが分かっている。

 従業員の多くが現在担っている業務は自動化の対象になっているため、恐れではなく「期待と活力」を持たせるためには、こうしたビジョンの共有と透明性が極めて重要だとコーソン氏は強調する。

 「イノベーションの“筋肉記憶”(muscle memory)を育てる方法は、実際に実験し、学び、反復することにある」と彼は述べる。CFO自身がチーム内に試行錯誤を促進する環境を意図的に設計する姿勢が求められている。

© Industry Dive. All rights reserved.

ページトップに戻る