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なぜ旅館は「1泊2食付き」を続けるのか 観光地の夜が静まり返る本当の理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

「1泊2食付き」から「朝食のみ」や「素泊まり」へと転換する事業者が増えている。日本の観光ビジネスにとって良い兆しだが、なぜかというと……。

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自分自身の首を絞めることに

 つまり、「1泊2食付き宿」というビジネスモデルは「晩御飯を食べて温泉に入って寝る観光客」を大量に生み出してしまうので、結果、宿周辺にカネが落ちず地域経済を衰退させていくのだ。

 これはまわりまわって「1泊2食付き宿」の経営にも、悪影響を及ぼすことは言うまでもない。当たり前だが、観光客は「宿」だけが目的ではなく、その地域全体に魅力を感じて訪れている。いくら旬の食材を使ったおいしいコース料理を出す素敵な旅館であっても、周辺がシャッター商店街で閑古鳥が鳴いているような地域だったら「また来たい」となりにくい。

 つまり、どんなに宿の雰囲気、料理、温泉などが良くて「人気の宿」になったとしても周辺がさびれていれば結局、リピーターが付かないので、宿も次第に閑古鳥が鳴くようになるのだ。

 これは「イオンモール」などの巨大ショッピングモールができた地域をイメージしていただければいいだろう。客が殺到してモールの活気が上がれば上がるほど、モール周辺の商業施設は廃れ、近隣の住宅街もゴースト化が進んでいく。詳しくは、以下の記事を読んでいただきたい。


イオンモール(出典:プレスリリース)

 これと同じような「負のスパイラル」が日本の観光地では何十年も繰り返されてきた。「1泊2食付き宿」がいくら繁盛しても、宿周辺の飲食店は潤わず、人口減少や過疎化で地域の「にぎわい」はどんどん失われた。

 観光客は「静かで自然豊かなところに行きたい」と言うが、廃れた場所やシャッター商店街は敬遠するものだ。結果、京都や大阪などのメジャー観光地を除くマイナーな観光地では衰退がどんどん進み、繁盛していた宿もどんどん苦戦するようになったというわけだ。

 ビジネスの世界では「顧客の囲い込み」が盛んに言われるが、自分たちだけで客を独占して周辺を弱らせることは、まわりまわって自分自身の首を絞めることにつながるものなのだ。

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