「紅茶戦争」の幕開け? セブンやスタバが注力するティー業態の裏側(4/5 ページ)
これまでコーヒーの提供を行ってきたコンビニやコーヒーチェーン各社が、紅茶事業にも注力し始めている。コーヒーに続き、「紅茶戦争」の幕開けとなるのか……。
「紅茶戦争」はそもそも起きるのか?
では、今後「紅茶戦争」はどのように展開されるのだろうか。
一ついえるのは、セブンが紅茶に進出したからといって、カフェチェーンの紅茶業態が大打撃を受けるとは考えにくいということだ。そもそも、紅茶を買う場面と、カフェでゆっくり紅茶を飲む場面は基本的に重ならない。そのため、商材は同じでも利用場面を考えると完全な競合にはならない。
しかし、根本的に私が感じるのはこの「紅茶戦争」自体が成立しない可能性だ。
そもそも、コーヒーと比べたときの紅茶の市場規模はまだまだ小さい。2022年度のコーヒーの市場規模が約7500億円だったのに対し、紅茶は約1720億円。4分の1程度の規模しかない。つまり、市場規模がそもそも小さいため、拡大にも早々に限界が訪れる可能性がある。
経済評論家の加谷珪一氏は、コンビニコーヒーが成功した理由として、潜在的な需要も含めて市場規模が大きかったことを挙げている。事実、コンビニコーヒーが本格的に登場した2013年以後、日本のコーヒー消費額は増加した。これは、コーヒーを飲みたかったが機会がなかった人たちがある程度いたということだ。
それに対して、紅茶はどうか。実はこれまでもカフェチェーンは紅茶を主軸にしようとして、うまくいかなかった経験がある。例えば、米スターバックスは「ティバーナ」を拡大させようとしたものの、2017年に379店舗を閉鎖し、ティー事業が「失敗」に終わった。
それだけでなく、そもそも潜在的に紅茶への需要が高ければ、すでに日本には紅茶を主軸とする全国規模のカフェチェーンがあってもおかしくはない。しかし、今までそれが現れなかったのは、紅茶の広がりが限定的なものに止まっているからではないだろうか。ちなみにファミリーマートもレジ横で紅茶を販売しているが、コーヒーほどには広く受け入れられてはいないようだ。
始めてみたものの、あまりうまくいかず各社が静かに撤退……なんて未来もあるかもしれない。
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