退職代行は「若者の甘え」──安易に切り捨てる企業が「非効率」に陥るワケ:労働市場の今とミライ(2/3 ページ)
本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝える「退職代行サービス」を使って退職する人が増えている。今後、退職代行の利用が増え続けることは企業社会にどのような影響を及ぼすのか。労働者と企業、双方に与えるメリットとデメリットを検証したい。
入社前に聞いていた話と違った
新卒社員に多いのが「入社前に聞いていた話と違った」という理由で辞める人だ。モームリによると以下の理由が挙がっている。
「入社前に給料は26万あると聞いていたが、入社後20万円と書かれた契約書にサインさせられた」(販売業・女性)
「入社後に休日出勤の必要があると説明を受けた。入社前はそのような説明は一切受けていなかった」(教育関連・女性)
「入社前に聞いていた出勤日数、休日日数と入社後に受けたそれらの説明の内容が違った」(製造業・女性)
今の若者は労働条件に敏感である。昔であれば入社前の説明と勤務条件が違っていても我慢して入社する人もいたかもしれない。しかし、今は少しでも会社が言ったことと食い違うと「ブラックかも」と思い、すぐに退職してしまう。これは明らかに正確な情報を周知しなかった人事部や採用担当者のミスである。
あいまいな説明で入社までこぎつけたとしても、雇用契約を結ぶ際には企業に「労働条件明示義務」がある。さらに2024年4月から労働基準法15条の明示義務の労基法施行規則が改正され、雇入れ直後の就業場所と従事すべき業務に加えて、就業場所や従事すべき業務の「変更の範囲」についても明示が必要になった。採用に多額の予算を投じながら、労働条件の正確な説明を怠ったことで退職されるのは企業にとって大きなリスクとなる。そういう意味では、退職代行は採用活動の改善を促す意味では企業側にも一定の効果があるといえる。
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