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DeepSeekにどう対抗? OpenAIやAnthropicが戦略転換を迫られる3つの理由(2/2 ページ)

中国製のAIモデル「DeepSeek R1」のリリース以来、コストパフォーマンスの良い中国製AIモデルが次々とリリースされている。このコスパの良いモデルの攻勢は、OpenAIやAnthropicといった米国を代表するAIモデルにどのような影響を与えるのだろうか。

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基盤モデルの使用料収入からのビジネスモデル転換へ

 Doria氏の言うように、米国のAI大手は基盤モデルの使用料(API接続料)収入に頼ったビジネスモデルから、特定用途に特化した製品を出すという方向に戦略転換し始めたようだ。

 米有力AIスタートアップDatabricks社のNaveen Rao(ナヴィーン・ラオ)氏は「大手AIラボはAPI接続を2、3年以内に止めることになるだろう」と、X(旧Twitter)に投稿した。この投稿の中で同氏は「全てのクローズドAIモデルの提供会社は、API接続のサービスを2、3年以内に止めるだろう。API接続を提供するのは、オープンソースのモデルだけになるだろう。クローズドモデルの提供会社は、コモディティ化しないような機能の開発に注力している。そのためには優れたUIデザインも必要。もはや基盤モデルではなく、特定の目的を持つUIデザインのアプリになる」としている。

 Doria氏もRao氏の予測に賛同しており、事実OpenAIのDeep ResearchはサードパーティへのAPI接続を認めていないし、AnthropicのClaude Sonnet 3.7はAnthropic製のアプリでは完璧に動作するものの、API接続を利用した他社製のアプリではうまく動作しないことがあるという。

 大手AI企業が基盤モデルのAPI接続を提供しなくなれば、大手の基盤モデルをベースに各種エージェントやアプリを開発、運用しているサードパーティや一般企業はどうすればいいのだろうか。

 Doria氏によると、サードパーティの中でも力のある社は、自社モデルや自社機能の開発に注力し始めているという。例えば、Perplexity社は分類器と呼ばれるAIモデルを独自に開発しているほか、中国のDeepSeekを改良して検索機能の強化を急いでいる。Cursor社は自動補完モデルを開発したし、WindSurf社も安価なコーディングエージェントCodiumを開発している。

 シリコンバレーの著名投資家Bill Gurley(ビル・ガーリー)氏によると、米国の大企業でもDeepSeekのモデルをダウンロードして改良し、それを米国内のサーバーにインストールするところが増えてきているようだ。

 それほど開発力のない中小企業やスタートアップは、オープンソースのAPI接続を利用しながらも、特定の領域に特化したUI、UXのデザインや機能に注力するしかなくなるかもしれない。

 米国の大手AI企業が、2、3年後にAPI接続ビジネスをやめるのかどうか。それはまだ分からない。だが、そうなった時のことを考えた戦略立案が必要になってきた。中国AIの躍進で、AI業界が新たなフェーズに入ってきたことだけは間違いなさそうだ。

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「中国モデルの攻勢で戦略転換を迫られる米AI大手」(2025年3月27日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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