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ロボットが柱を立て、壁を塗る 建設の常識が変わり始めているロボットビジネス(2/2 ページ)

建設業界にもロボットや3Dプリンターの導入が進み、現場の自動化や省人化が加速している。危険作業の代替から建材の製造、さらには建物そのものの施工まで、技術革新が建設の常識を大きく変えようとしている。

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ロボットビジネス』(安藤健/クロスメディア・パブリッシング)

 このような活用により、危険な作業や高度な技術が要求される作業も、効率よく安全におこなうことができるようになっています。大手ゼネコン各社もタッグを組み、「建設RXコンソーシアム」という業界団体を設立し、現場作業をいかに効率化できるのか知恵を出し合い、オールジャパンでの取り組みもますます加速していきそうです。

 そして、建材メーカーやハウスメーカーは、建材・部材製造の自動化を進めています。とりわけ興味深いのは、3Dプリンターとロボットを組み合わせ、コンクリート建材の製造をおこなう取り組みです。

 3Dプリンターといえば、小さい部品を樹脂でつくるイメージが一般的ですが、それを大型化し、樹脂の代わりにコンクリートを吐出するというものになります。これにより、無駄な材料費や時間を削減できるだけでなく、これまでにはできなかった複雑な形状の部材も迅速かつ正確に製造することが可能となり、デザインの幅を広げることになっています。

 このようなオンリーワンの形状を求める取り組みがある一方、標準的なかたちの建物に対しては、モジュラー構造の取り組みもあります。例えば、日照時間が短く作業時間が限られる北欧や都市への人口集中を進めようとする中国などでは規格化されたモジュールを自動的に製造し、組み上げていくこともできるようになってきています。これにより現場での作業が大幅に減り、工期短縮やコスト削減が実現しているのです。

 このようなロボットの活躍を支えるキーシステムがあります。それは「BIM(Building Information Modeling)」と呼ばれる、デジタル化された現場の図面のようなものです。このBIMがあることで、建物のさまざまなデータを管理し、設計から施工、運用まで考えることができるようになります。もちろん、ロボットがどのように動けばよいのかについてのシミュレーションもしやすくなるのです。

 建設業界はこれまで「きつい・汚い・危険」の「3K」だと言われてきました。しかし、ロボットなどの導入により、このイメージを変えていこうという流れがあります。国土交通省も後押ししながら目指すのは、「給与・休暇・希望」の「新3K」です。いま生産性向上、コスト削減、安全性確保を実現させ、さらにはよりポジティブなステージへと、建設業界は進化しようとしているのです。

著者プロフィール:安藤健(あんどう・たけし)

 ロボット開発者

 早稲田大学理工学部、大阪大学医学部での教員を経て、パナソニック(現・パナソニックホールディングス)入社。ロボットの要素技術開発から事業化までの責任者のほか、グループ全体の戦略構築も行う。大阪工業大学客員教授など複数の大学での教育活動、日本機械学会・日本ロボット学会などの学会活動、経済産業省・業界団体の委員なども積極的に実施。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、ロボット大賞(経済産業大臣賞)、Forbes JAPAN NEXT 100など国内外での受賞多数。ロボットに関する発信や講演活動も展開中。


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