「10年後にはiPhoneが不要になるかもしれない」──AIの進化を理由に、米Apple(アップル)幹部がそう語った。
「10年後にはiPhoneが不要になる」とApple幹部が語るワケ
Appleのサービス部門上級副社長エディ・キュー(Eddy Cue)氏は、AIの台頭により、消費者が10年後にはiPhoneを必要としなくなる可能性があると述べた。
Appleは2007年に初代iPhoneを発売して以来、スマートフォン市場をけん引してきたが、キュー氏は今回、AIとウェアラブルデバイスの組み合わせが、従来のスマートフォンに代わる可能性があると示唆した。
キュー氏は5月7日に行われたGoogle検索の反トラスト(独占禁止)訴訟の審理において、次のように証言した。
「10年後には、iPhoneを必要としなくなるかもしれません。突飛に聞こえるかもしれませんが、現実に起こり得る話です。真の競争が生まれるのは、技術の転換点が訪れたときだけです。技術革新が新たな機会を創出するのです。AIはまさにそのような新たな技術の転換点であり、新規参入者にチャンスを与えています」
またキュー氏は、Appleがかつて人気を博した携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」を自社で終息させ、その機能をiPhoneに統合したことを「Appleが行った最も優れた判断の一つ」と振り返った。
「私たちはiPhoneによって、自らiPodを終わらせました。新しい技術が登場したとき、多くの企業は自社の主力製品を打ち切ることができません。『金の卵を産むガチョウをなぜ殺すのか』という恐れがあるからです」
「そのため大抵の場合、新技術の登場とともに新しい企業が生まれ、既存の企業はそれに対応するのが難しいのです」
さらにキュー氏は、iPhoneだけでなく、AIへの取り組みに関しても言及し、AppleがAIを活用した検索エンジンへの注力を通じて、自社のWebブラウザ「Safari(サファリ)」の刷新を積極的に検討していると明かした。
これはGoogleにとって大きな損失となる可能性がある。Appleは2002年以降、Googleの検索エンジンをAppleデバイスのデフォルト検索として設定するために、年間200億ドル規模の契約を結んでいるからだ。
キュー氏は、Apple製品におけるSafariでの検索数が先月初めて減少したと述べ、その背景にAIの利用増加があると指摘した。
このような変化を踏まえ、同氏はOpenAIやPerplexity AIといったAI検索プロバイダーが、従来型の検索エンジンに取って代わると予測しており、Appleとしてもこれらの選択肢を今後のデバイスに導入する可能性があると語った。
「そうしたプロバイダーも選択肢に加える予定ですが、デフォルトにはならないでしょう」とキュー氏は述べている。

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