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「決済アプリ」の次なる一手は何か? PayPay金融グループの“第2章”が始まった「ポイント経済圏」定点観測(4/5 ページ)

決済アプリのイメージが強いPayPayだが、着々と「金融サービス」としての立ち位置を築くための歩みを進めている。

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NISAの口座数は42万超で、業界トップ10入り

 ではPayPay金融グループの中で、PayPay証券はどのような役割を担っているのか。栗尾氏は「投資によって資産を増やす立場だ」と位置づける。

 「銀行に預ければ利息が得られるが、それ以上のリターンを目指して、PayPay証券で積極的に資産運用したいというユーザーもいる。そうしたユーザーに対して、さまざまな選択肢を提示することが重要だ」とし、それを7000万人が利用するプラットフォーム上で実現することが、PayPay証券の使命だと栗尾氏は話す。

 その強みの1つが、少額からの投資を可能にする仕組みだ。「金額指定で購入できることが当社の強みであり、100円から投資できることが非常に重要」と栗尾氏は強調する。

 また、PayPay証券が力を入れてきた特徴的なサービスの1つが、PayPayポイントを使った投資体験「PayPayポイント運用」だ。現在は、約2000万人のユーザーを抱える規模にまで成長している。


PayPayポイント投資サービスのユーザー数推移。2025年5月には2000万人の運用者数を達成

 栗尾氏は「当初100円から購入可能としたものの、利用者の反応は期待したほどではなかった。多くのユーザーが、アプリを開いたものの、何をすれば良いか分からないという状況だった。そこで、まず投資を体験していただいた上で、実際の口座での取引に移行してもらう方が効果的だと考えた」と、その狙いを説明する。

 これによる成果も出始めている。NISA口座数は2025年3月時点で42万超となり、業界トップ10に入る規模だ。栗尾氏はこの成長を評価しつつ、「単に口座を開設する段階から、ユーザーの資産が実際に増加しているかを、各証券会社が冷静に分析すべき時期に来ている」と指摘する。

 PayPay証券とPayPay銀行が同じ資本の傘下となったことで期待されるのが、銀行と証券の連携(以下、銀証連携)だ。例えば楽天では、楽天証券での株式の買い付け資金が楽天銀行から自動的に引き落とされ、株式を売却したらその代金が自動的に楽天銀行に入金されるなど、ユーザーがシームレスに使える仕組みが構築されている。一方でPayPay証券では、これまでは株式や投資信託の買い付け時に、PayPay銀行から代金が決済されるだけにとどまっていた。

 グループで相乗効果を生み出す上で重要な銀証連携に関しては、どのような戦略を描いているのか。栗尾氏は「銀証連携の本質はユーザー体験にあると考えている。現在の証券口座と銀行口座の連携では、通常金利が0.7%のところ、連携により1%に優遇されるといった程度のものが多いが、これは単なる優遇施策であり、機能面での本質的な価値は限られている」と指摘する。

 「真の銀証連携とは、相互のユーザーに対して最適な選択肢を提供することにある」として、長期的には「残高を一元管理し、資金移動が容易にでき、コスト面も含めて総合的に管理できる環境の構築」が重要だと語る。

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