「決済アプリ」の次なる一手は何か? PayPay金融グループの“第2章”が始まった:「ポイント経済圏」定点観測(5/5 ページ)
決済アプリのイメージが強いPayPayだが、着々と「金融サービス」としての立ち位置を築くための歩みを進めている。
資産形成と将来の成長戦略は?
PayPay証券は、今後どのような成長を目指すのか。
「当社の目標は、PayPay経済圏内でより多くの資金を集め、真の金融会社として認知されることにある。その観点から、運用資産残高の拡大は重要な指標の1つだ」と栗尾氏は述べる。具体的な数値目標は明らかにしなかったが、「SBIや楽天とは規模が異なるため、それらを除くネット証券市場において、相応のポジションを確立していきたい」とする。
しかし、「もちろん競合他社との比較は意識しているが、それ以上に、PayPayの7000万人のユーザーにいかに利用してもらえるかを重視している」とし、業界内での立ち位置よりも顧客体験を優先する姿勢だ。
栗尾氏が特に力を入れようとしているのが、「PayPayらしい資産運用サービスの体験」だ。その特徴は、ユーザーにPayPayに加えて金融サービスも活用してもらい、PayPayの決済額をさらに増やしていくという好循環を生み出す点にある。「ロイヤルユーザーは、決済だけでなく金融サービスも併用することで、PayPayの基本機能である決済自体の利用も増加するというデータが出ている」と説明する。
「PayPayユーザーがNISA口座や証券口座を開設する際には、PayPayに対するロイヤルティが選択理由の1つとなっており、そこに大きな成長の可能性がある」(栗尾氏)。PayPayというブランドの強みを生かすのが、PayPay金融グループにとっての成功の鍵となる。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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