日本人が知らない“もうひとつのトヨタ” 世界で走るIMVの実力:『自動車ビジネス』(2/2 ページ)
トヨタが海外専用に展開する「IMV」シリーズは、日本では販売されていないにもかかわらず、世界140カ国で累計500万台を超えている。アセアン市場を中心に人気を集めているが、その戦略は……。
もともとアセアンでは、ピックアップトラック「ハイラックス」がヒットしていましたし、インドネシアではピックアップベースのミニバンが人気モデルとなっていました。これらを、ひとつのシリーズとして、まとめて開発することで、コストと販売価格を抑えることに成功したのです。
そして、2004年からスタートして、2012年にIMV販売は累計500万台を突破しています。また、生産国のひとつであるタイでは、約20年をかけて、400万台以上を海外に輸出するようになっています。
アセアンに行くと非常に多くのIMVを見かけることになります。ピックアップトラックの「ハイラックス」は、仕事だけでなく、家族のための乗用車的にも使われています。SUVタイプの「フォーチュナー」は、ほぼ高級車のような扱いとなっています。インドネシアの地でミニバンの「キジャン・イノーバ」は、現地のベストセラーを競う存在となっています。
ちなみに、いまのトヨタの副社長である中嶋裕樹氏は、IMVシリーズの8代目「ハイラックス」のチーフエンジニアを務めていました。トヨタは初代「プリウス」のチーフエンジニアの内山田竹志氏が、その後、トヨタ副社長を経て、会長にまで上り詰めたように、実績を上げた人が昇格するという会社でもあります。中嶋氏が、副社長になったのも、IMVという重要なクルマを担当していたからと考えて間違いないでしょう。
著者プロフィール:
鈴木ケンイチ
モータージャーナリスト
1966年生まれ。茨城県出身。大学卒業後に一般誌/女性誌/ PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。年間3、4回の海外モーターショー取材を実施、中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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