60代で「海外転勤」「未経験の仕事」も 村田製作所があえてハードな“65歳定年”にしたワケ(1/2 ページ)
2024年4月から65歳定年制を導入した総合電子部品メーカーの村田製作所は、60歳以降も「海外転職あり」「新しい業務への異動あり」など、現役バリバリで仕事ができる体制を整えた。同社の戸井孝則氏(執行役員 コーポレート本部 統括部長)が、65歳定年制導入の背景や1年間の成果を語った。
本記事の内容は、パソナが5月27日に開催したセミナー『村田製作所65歳定年制度導入〜ベテラン層の活躍推進と自律的なキャリア形成に向けて〜』の内容を要約したものです。
役職定年を迎え、定年退職まで残り数年。補佐的な業務が増え、報酬も下がり、働くモチベーションも低くなっていく──。そうしたベテラン層が、技術やノウハウを生かしきれていないことに悩む企業も多いのではないのだろうか。
2024年4月から65歳定年制を導入した総合電子部品メーカーの村田製作所は、60歳以降も「海外転職あり」「新しい業務への異動あり」など、現役バリバリで仕事ができる体制を整えた。同社の戸井孝則氏(執行役員 コーポレート本部 統括部長)が、65歳定年制導入の背景や1年間の成果を語った。
60代で「海外転勤」「未経験の仕事」も
65歳定年制について、戸井氏は「そもそも当社の人員構成では、定年延長を急ぐ必要性は高くなかった」と振り返る。それでも導入した理由の1つが、ベテラン層のモチベーションだった。
「サーベイ結果により、 ベテラン層、シニア層のエンゲージメントが低下していることが分かった。役職定年により処遇が下がったり、指導係的なポジションにやりがいを感じられなかったりしたことが原因だ」(戸井氏)。少子高齢化により労働人口が減少する日本社会において、経験豊富なシニア層は貴重な戦力だ。そんな彼・彼女らに全力を発揮してもらうため、65歳定年制の導入を急いだという。
定年延長に当たり、同社が社員に用意した選択肢は大きく分けて2つ。「現役続行」か「卒業」つまりは退職だ。
定年延長を導入後の現役続行とは、これまでの再雇用とは異なる。「60歳未満と同様にバリバリ働き、これまでのキャリアにはなかった新しい業務への挑戦や海外転勤もあり得る」(戸井氏)。その分基本給は59歳までの賃金体系を維持し、評価結果に応じて昇給・降給もある。賞与も59歳までの水準を維持する一方、評価結果に応じて59歳までの算式よりもメリハリをきかせるなど、働きに対してしっかり報酬を払うようにした。
60歳以降も現役時代の働きを求める一方で、個人の事情には配慮する。戸井氏は「ベテラン層は、体力や気力、家庭事情など個人差が大きい。『全員が一律で元気』という状態を目指すのではなく、自身の50歳レベルの健康を維持した状態で、60歳に到達できていることを目指す」と説明する。健康維持への取り組みは個人の意識による部分が大きいため、会社と社員が一丸となり、健康面での施策に取り組む方針だ。
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