就活生向けの“面接音声投稿サービス”に賛否 法的には問題ないのか 弁護士に聞いた(1/2 ページ)
就職活動中の学生が、採用面接やOBOG訪問などの音声を投稿・共有できるサービス「Voice Career」が話題を呼んでいる。こうしたサービスに、法的な問題はないのか。佐藤みのり弁護士に聞いた。
佐藤みのり 弁護士
慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。
就職活動中の学生が、採用面接やOBOG訪問などの音声を投稿・共有できるサービス「Voice Career(以下、ボイスキャリア)」が話題を呼んでいる。運営会社であるEdu Studio(東京都港区)の公式Webサイトによると、ボイスキャリアは、就活生が自身の振り返り用として録音した実際の面接やグループディスカッション、OBOG訪問などの音声を投稿するサービスだ。他の就活生が音声を就活対策に活用することが想定されている。2025年3月時点で250社、5万分の音声データが掲載中だという。
ボイスキャリアを利用するには、会員登録が必須となっている。会員登録時には大学専用のメールアドレスを入力する必要があり、学生しか登録できないようにしている。投稿された音声は全て匿名加工され、会員のみが聞ける仕組みだ。
一方、企業名や選考年次、面接形式などは会員登録なしでも閲覧可能。アクセンチュアやキーエンス、三菱商事など、業界ごとに企業名が一覧になっている他、新しい音声が追加されると新着情報として表記されている。
面接の録音を禁止したり、OBOG訪問時に話した内容をオープンにしないよう依頼したりしている企業もある。集団面接の場合、録音をした学生以外の受け答えがデータに入ってしまうことも考えられる。こうしたサービスに、法的な問題はないのか。佐藤みのり弁護士に聞いた。
法的に問題はないのか 弁護士の見解は?
――ボイスキャリアのサービスは法的に問題ないのでしょうか。
佐藤弁護士: 内定者が、企業や自分以外の発言者の同意を得ずに録音した音声を、ネット上に投稿する行為は、内容によってプライバシー権侵害、名誉毀損などの違法行為になる可能性を否定できません。仮に、企業や面接参加者などが被害を訴え、ボイスキャリアの運営会社に削除要請をした場合、運営会社は「権利が侵害されているのを知っていた」または「知り得たと認めるに足る相当の理由がある」とき、削除に応じなければ、損害賠償責任を負う可能性があります(情報流通プラットフォーム対処法3条1項)。
なお、ボイスキャリアの利用規約には、投稿された音声に関して第三者との間に紛争が生じた場合、「投稿ユーザーの費用と責任で解決する」と記されています。その内容が法令に抵触しているかどうかについて、運営側が監視・確認する義務はなく、ユーザーや第三者に損害が生じた場合でも「責任を一切負わない」としているようです。
しかし、消費者契約法8条1項により、事業者の債務不履行や不法行為により消費者(ユーザー)に生じた損害を賠償する責任を全部免除する規定は「無効」とされています。また、利用規約により、第三者の事業者に対する損害賠償請求権を制限することはできません。
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