生成AIで「社員の発想力」を磨け CX向上につながる3つの活用術:“掛け算”で強くする会社経営(2/4 ページ)
“コモディティ化”の時代において、顧客に“選ばれる体験”作りが重要性を増しています。CXを生み出しているのは、社員一人一人。CX視点で設計されたEXが不可欠なのです。
社員の発想力と再現性を高める 生成AIの活用法
顧客に選ばれる体験を実現するには、単なる思い付きや属人的な発想ではなく、継続的に価値あるテーマを発見し、ストーリーとして設計・実行していくプロセスが必要です。そこにおいて注目されているのが、生成AIとの共創による社員の発想支援の可能性です。
筆者のいるチームでは、発想力と再現性を高めるアプローチとして、次の3つの生成AI活用視点を提案しています。
1. 発想の“タネ”を増やす──着眼点やアイデアの拡張
社員の皆さんのひらめきや気付きを起点に、生成AIが膨大な情報から視点を広げてくれます。例えば、ある生活者の消費行動について、
「なぜ今この行動が注目されているのか?」
「どんな変化の兆しがあるか?」
といった問いを投げかけることで、顧客体験の仮説づくりの精度が上がり、顧客視点でのテーマ構想の幅も広がります。
2. 発想の“スピード”を上げる──アジャイルに構想・検証を繰り返す
生成AIは、発想を素早くアウトプットに変換し、試行錯誤のプロセスを支援します。例えば、仮説をもとに複数のアイデア案やストーリーを即座に提示することで、構想から検証、修正のサイクルを迅速に回せるようになります。これにより、従来よりも短時間での、精度の高いシナリオ設計が可能になります。
3. 発想の“型”を整える──再現性ある一貫した体験設計
生成AIは、社員の皆さんとのやりとりを学習することで、発想をテンプレート化したり、ペルソナごとの体験ストーリーを整理したりと、顧客体験設計の「型化」を支援することができます。これにより、誰もが同じ視点で発想し、一貫性のある体験を描ける土壌が生まれます。属人的な取り組みから、組織全体での発想力強化へとつながります。
このように生成AIは、発想の拡張・加速・定着の全てのステップで支援役として機能し、社員の皆さんの創造性を引き出す有力なパートナーになり得ます。
「AI×発想プロセス」 業務に取り入れる際の3ステップ
続いて、こうした生成AIの活用視点を、実際の業務にどう取り入れていけるのか、活用のステップについてご紹介します。
顧客にとって「意味のある体験」を創出するには、構想を描くだけではもちろん足りず、それを実務の現場で活用できる形にまで落とし込むことが求められます。本章では、発想を実践へとつなげるための3つのステップをご紹介します。生成AIは、この一連のプロセスでさまざまな役割を担ってくれますが、いずれにせよ、着眼・思考・実行の全てを支援する強力なパートナーとして活躍します。
ステップ1:発想転換──市場の兆しを捉え、新たな需要を生むテーマを描く
構想の出発点は、生活者の違和感や未言語化の期待に目を向けることです。
このステップで生成AIは、大量の情報から兆しを読み取り、「なぜこの変化が起きているのか」「どのような価値観が背景にあるのか」といった問いを引き出しつつ、“壁打ち相手”の役割を果たします。AIとの対話を通じて、市場分析・機会発掘・戦略構想を一気通貫で行い、自社ならではの提供価値やテーマを発見することができます。
ステップ2:発想をつなげる──顧客視点であらゆる接点をつなぐ体験価値に変える
構想を実際の体験価値に変換するには、あらゆる顧客接点を「点」ではなく「線」でつなぐストーリー設計が不可欠です。ここでは、事業開発・商品開発・マーケティング・サービス・CRMといった各領域に通底する一貫性のある体験ストーリーが求められます。
このステップで生成AIは、規定した顧客インサイトやブランド価値に基づき、顧客接点ごとの位置付けやメッセージを明確化・整理する役割を果たします。細かいチューニングを繰り返しながら、自然で連続性ある顧客体験へと昇華させていきます。
ステップ3:発想を実践する──発想プロセスの型を自社で活用できる環境を作る
構想が実行され、継続的に生かされるためには、属人的なアイデアで終わらせず、「再現性あるプロセス」として型化する必要があります。
このステップで生成AIは、市場分析・戦略シナリオ策定・顧客体験設計・企画制作・受容性検証といった、実行までに必要なプロセスは何かを整理し、テンプレート化・ルール化する役割を果たします。ナレッジの可視化やツールの整備と併せて、社員の皆さんが常に顧客視点で発想し、行動できる環境を整えていきます。
この3ステップを経ることで、一社員の小さな発想であっても、個人の構想にとどまらず、実装可能で、組織としても再現性のあるアクションへと進化していきます。
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