ウォークマンの時代から続いたJCBのポイント、「使いにくい」は変わるのか:「ポイント経済圏」定点観測(4/5 ページ)
クレジットカード業界初のポイントサービスとして1981年に始まったJCBの「Oki Dokiポイント」が、2026年1月に「J-POINT」へと全面リニューアルとなる。その狙いと課題は何なのか?
JCBが打ち出した「2つの柱」
こうした状況を打破するため、JCBは2つの柱からなる改革を打ち出した。
・1つ目の柱:ポイントの直接利用を可能に
変更の1つは、自社のコード決済サービス「MyJCB Pay」を改良し、リアル店舗での直接利用を実現したことだ。これにより、複雑な手続きを経ることなく、貯まったポイントをその場で決済に使えるようになる。
この実現のために、JCBは1ポイント=1円への統一を進めた。「1ポイント1円として、店頭で使える」が当たり前になった時代に、複雑なレート計算は致命的な弱点だった。石谷次長は「お客さまにストレスなく使っていただきたい」と語り、分かりやすさを最優先にした判断だったと説明する。
さらに、他社ポイントへの交換レートも0.7円相当に統一した。従来は交換先によって0.6円から1円ベースまでバラバラだったが、「結果的にお客さまに分かりにくくなっていた」状況を解消するため、シンプルな体系に整理した。これにより、ユーザーは迷うことなくポイントの価値を把握できるようになった。
・2つ目の柱:利用金額に応じた還元システムの刷新
もう1つの柱が、年間利用額に応じたボーナス付与システムの導入だ。この仕組みは近年、業界でもトレンド化している。
先駆けとなったのはエポスカードだった。ゴールドカード以上の特典として、年間50万円以上の利用で2500ポイント(0.5%の追加還元)、100万円以上で1万ポイント(1%の追加還元)を提供する仕組みを導入。基本還元率が0.5%のため、このボーナスの効果は大きかった。ユーザーにとっては「なんとか年間100万円使いたい」というインセンティブとなり、カード会社にとってはメインカードの地位を獲得するチャンスとなるWin-Winの仕組みだ。
この成功を受けて、三井住友カードもゴールドカードで年間100万円利用時に1万ポイントを提供。メルカード ゴールドも年間利用額50万円で2500ポイント+年会費無料、100万円で1万ポイント、200万円で2万ポイントと段階的なメリットを訴求するなど、業界全体にこの手法が広がった。
JCBも従来「JCBスターメンバーズ」として、年間利用額に応じてポイント倍率が上がるプログラムを提供していた。年間利用額が100万円でポイントが1.5倍、300万円で2倍になる仕組みだったが、これには大きな問題があった。前年の利用額に応じた翌年の倍率アップという「2年越し」の仕組みで、即効性に欠けていたからだ。さらに、「1.5倍」や「2倍」といった倍率よりも、「◯◯ポイントがもらえる」という直接的な表現の方が、ユーザーには分かりやすいという課題もあった。
そこで今回、「50万円利用ごとに翌月ボーナス付与」の「J-POINTボーナス」にリニューアルした。ゴールドカードの場合、最初の50万円利用で1000ポイント、次の50万円で2000ポイント、以降50万円ごとに2000ポイント付与し、250万円から300万円の区間では6000ポイントを付与する仕組みだ。
この変更の狙いは「せっかちなポイ活利用者」への対応だ。ポイント獲得に熱心なユーザーほど、すぐに成果を求める傾向が強い。2年越しの恩恵より、翌月に確実にもらえるボーナスの方が、はるかに魅力的なインセンティブとして機能するのである。
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