2015年7月27日以前の記事
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不動産営業が「押し売り」にならないようにするポイントとは? カギは「4つのステップ」(3/4 ページ)

都心部で億ションが林立するなど、地殻変動を続けている不動産業界。いま、その営業担当者に求められているポイントとは何か。識者が解説する。

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顧客は営業のことを見透かしている、という意識が必要

 自分に置き換えると分かりやすいかもしれません。年収を不動産会社に提示して、その年収で住宅ローンを組める最高額で提案をされたらどうでしょうか。今の年収が継続するか、昇給するかも不透明なこの世の中で、住宅ローンをフルに組んでしまうよりも多少余裕を持って臨みたいはずです。

 ヒアリングをさほどせず、年収を中心に「これは高額物件のチャンス」と最大値で物件を提案し、「これがベストです、素敵ですよね」と推していく営業を想像してみてください。「どうもいいことだけ並べられてお金だけを吊り上げられているような気がする。もう少し他社も比較してみよう」と思うのではないでしょうか。

 先ほどの図では、1社(D社)からは、自社の売り上げとなる範囲以外も含めて見積もりが出ており、顧客目線での提案に感じます。その見積もりと比較すると、他社には抜け漏れが多数あり、追加で発生する費用もありそうです。

 家を買うのが初めての人にとっては、費用が詳しく分かりません。見積もりを鵜呑みにして進行すると、あとで大きく予算オーバーすることは容易に想像できます。しかし、売り手側からすれば自社の範囲外の費用を抜いて自分たちのサービス範囲だけ示しておけば、安く見えるため決まりやすいと他の各社は考えたのでしょう。

 ちなみに知人は、他社の見積りに安い項目があったので、D社に「他社ではこの項目が御社より50万円も安くなっていたのですが同じような価格にならないのですか」と聞いたそうです。すると、営業は次のように回答したそうです。

 「この項目は経験上、土地を見る限り一定の費用がかかると思います。あとから上乗せとなるのが分かっているのに、いったん低めで見積もるのはよろしくないと思います。まずはこの金額で検討いただき、もし実地調査で減額となったらインテリアなど楽しい部分にお金を使うことにしませんか」

 普通は案件を取りたいために「他社の価格に合わせます!」といってしまいそうなものです。一生に一度あるかないかの最も高額な買い物である住宅では、営業が信頼できるかどうかはかなり重要なポイントでしょう。にもかかわらず「顧客には売り込みありきの自己都合型スタイルだと見透かされている」という意識を持てていない営業も多いのではないでしょうか。

 ネガティブな情報を正直に述べるのではなく、全て否定して売ろうするスタイルが通じる時代ではもうありません。顧客はSNSを中心に常に情報を取得して勉強していますから、営業の内容に親身な事実が伴っていない場合、他社に意識が向いていくことになります。

 実は、家を購入した後までの視点を持つ営業はレアです。セキュリティや、固定資産税に影響する項目、もし10年後に売りに出す場合の魅力の保持など、広い視野で進言する営業こそが「選ばれる営業」という点は意識する必要があるでしょう。

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