不動産営業が「押し売り」にならないようにするポイントとは? カギは「4つのステップ」(4/4 ページ)
都心部で億ションが林立するなど、地殻変動を続けている不動産業界。いま、その営業担当者に求められているポイントとは何か。識者が解説する。
不動産営業には「4つのステップ」がある
家を検討し、建てるまでの一般的なフローを整理したのが次の図です。
ここで営業として大切なことは、自社領域だけではなく、もっと先の工程も含めた全体を踏まえたアドバイスをすることです。自社のサービスだけを話す営業では必ず顧客から「単なる売り込み営業」と思われてしまいます。「それを加えると、後々固定資産税が高くなることになります。毎月のご負担が数万円ほど増えそうですが大丈夫ですか」など、そぎ落とす部分も提言するのがポイントです。
経済的な面と性能、デザイン的な面に加え、防犯や災害対策など生活の安全に重きを置いた提案をすることも肝要です。家を購入する多くは初心者ですから、その初心者に対して、熟練のプロとして素敵な未来の生活を提供するのが不動産営業の責務であり醍醐味でもあるはずです。
ビジネスの現場では現状の姿を「As-Is」、理想の目指すべき姿を「To−Be」といい、そのギャップを埋めていくアプローチをよく行います。家作りでも同じことがいえるとともに、理想を超える夢のような生活の提案も、不動産業では可能です。単に顧客に無理をさせて営業成績にしようとするのではなく、現実的に可能で、楽しみを最大化させる提案を行うとともに、顧客自身ですら気付いていない領域までを提案してこそ、事業の価値といえるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、そのためには家作りの全工程を加味した考察を徹底し、顧客にとって金銭負担も含めどのような家が最も幸せになるのかに思いを巡らせる営業マインドとスキルが必要です。
営業に必要となる視点別のステップは、大まかに4つです。具体的には、ステップ1が「自社のサービス範囲内のみの売り込みスタイル」、ステップ2が「自社サービス範囲に限らない全工程を加味した顧客視点」、ステップ3が「未来のリセールも加味した人生設計の視点」、ステップ4が「相続後の次世代の視点」です。
このうちステップ2以降こそが信頼、感謝される営業と捉え、営業スキルの体系化をしていくことが大切です。顧客目線で全体最適の営業が不動産業界で勝つポイントというのは、他の業種においても共通する部分があるのではないでしょうか。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
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