トライアルが描く未来の店舗は? スマートカートと顔認証決済で変わる買い物体験(1/4 ページ)
トライアルHDが推進する未来型の店舗がある。スマートカートや顔認証決済の導入により、スムーズで快適な買い物体験を実現する。新技術が小売業の常識を変える最新の取り組みを紹介する。
九州を中心にディスカウントストアを展開するトライアルホールディングス(HD、福岡市)は、大手スーパーの西友を買収することで話題となったが、テクノロジーを活用したリテールDXの推進でも知られている。
セルフレジ機能が付いたショッピングカート「Skip Cart」や、電子棚札を用いた自動値下げ、顔認証決済システムの導入など、小売業界の「ムダ・ムラ・ムリ」の解消に向けた同社の取り組みを取材した。
トライアルHDによると、日本の小売業界は欧米と比べてサプライチェーンの効率が低く、商品が消費者に届くまでのコストの約30%(40兆円)には、改善余地があるという。
特に、発注・補充・物流の現場には、過去の慣習に依存した「ムダ・ムラ・ムリ」が多く残っており、同社はこの問題を構造的に解消するため、ITとデータを活用した改革に取り組んでいる。
2024年1月からはNTTと連携し、サプライチェーン全体の最適化に着手した。NTTのデジタルツイン技術(仮想空間上に全く同じ環境を再現すること)を使って、実際の店舗の様子をデジタル空間にそっくり再現することで、店で実験をしなくても、高精度なシミュレーションができるようになった。その結果、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を速く回せるようになっている。
重視するのは自社のみでのDX推進ではなく、メーカー・卸・小売といった流通業界全体が連携して行う、いわば「横のDX」だという。そこで同社は、福岡県宮若市で、大手メーカーなど約50社と一緒に共創プロジェクトを進めている。使われなくなった学校を改装して作った施設を活用し、会社同士の垣根をこえて協力しながら、流通業界全体を変えていこうとしている。
トライアルHDが目指しているのは、発注作業を自動化して、商品の欠品や売れ残りによるムダを減らすことだ。これからは、売り場の棚の配置をより良くしたり、お客さん一人ひとりに合った商品や情報を届ける「One to Oneマーケティング」にも取り組み、サプライチェーン全体のデジタル化を進めていく考えだ。
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