トライアルが描く未来の店舗は? スマートカートと顔認証決済で変わる買い物体験(3/4 ページ)
トライアルHDが推進する未来型の店舗がある。スマートカートや顔認証決済の導入により、スムーズで快適な買い物体験を実現する。新技術が小売業の常識を変える最新の取り組みを紹介する。
小型店舗の「トライアルGO」
トライアルHDのリテールDX戦略をより色濃く体現しているのが、「トライアルGO」だ。売り場面積が2000坪超のような同社の大型店舗に比べて、40〜300坪とコンパクトな小型店舗であるため、都市部にも出店しやすいという特徴がある。3000〜1万1000点の商品を陳列し、365日24時間営業している。
店内には、効率化の仕組みを随所に配置している。AIカメラで売り場の状況をリアルタイムで把握し、売れ行きを予測して自動で商品を発注したり、総菜の値下げも自動で行ったりする仕組みを取り入れている。
これにより、これまで人がやっていたルーティン作業を大きく減らせたうえに、スタッフの経験やスキルに頼らなくても、安定した店づくりができるようになった。
さらに、事前登録でセルフレジにて顔認証で決済できる「顔認証決済システム」も導入。スマートフォンや財布を取り出す必要がなく、スムーズに決済が完了する。2024年9月から展開し、8店舗で導入している(2025年6月現在)。
今後について同社の広報担当は、「利用者の反応を見ながら改善を重ねていき、順次広げていきたい」と説明する。利用者からは「早くて簡単で便利」といった肯定的な声も寄せられているという。
テクノロジーによって人の作業を削減した結果、無人営業の時間帯も生まれた。トライアルGOの廣石財社長は、無人店舗を作ろうとしたわけではなく、「作業を効率化していった結果」だと語る。
また、トライアルGOはスーパーセンターなど同社が運営する大型店のサテライト店舗としての役割も担う。大型店で製造した総菜を販売することで、都市部でも同様の商品を提供できる仕組みだ。
店舗の規模はコンビニに近いが、差別化を図るうえで総菜は欠かせない。トライアルGOでは、鮮魚を使った寿司のほか、オリジナルブランドの総菜も提供している。「作ってから食べるまでの時間を短くしたい」と廣石氏も話すように、今後は買収した西友の店舗を「母店舗」として活用し、その近くにあるトライアルGOにできたての商品を届ける計画もある。
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