「ゲームみたい」新人のやる気が上昇 オリックス生命コールセンター研修のウラ側(4/5 ページ)
日々さまざまな問い合わせが寄せられる生命保険会社のコールセンター。オリックス生命保険は5月から、コールセンター部門に配属される新入社員の研修を大幅にアップデートする挑戦を始めた。同社に話を聞いた。
AIアバターの思わぬ落とし穴
順調に見えるAIアバターの運用だが、導入時は大きな課題に直面した。それは生成AI特有の問題である、モデルのバージョンアップに伴う精度の悪化だ。
「導入準備を進めていた3月頃、予期せぬトラブルに見舞われました。AIアバターの基盤となる生成AIモデルがバージョンアップされ、それまで正確に動いていた会話の応答が不自然になったり、新入社員の回答を適切に評価できなくなったりしたのです。
新しいバージョンは一般的な性能は向上していても、私たちが作り込んだ保険業務特有の対話パターンとの相性が悪いことも。エクサウィザーズ社と連携し、私たちの用途に最適な別のモデルに切り替えることで解決しましたが、生成AIは『バージョンアップすれば必ず良くなるわけではない』という教訓を得ました」(山下氏)
生成AIの特性以外では、業界特有の課題に直面した。「保険業界の専門用語に加え、当社独自の商品名も数多くあります。こうした業界用語や商品名を一つ一つAIに学習させ、正確に理解してもらう作業には時間がかかりました」(山下氏)。最初は1つのシナリオの精度を高めることを徹底的し、それを横展開する形で11シナリオまで拡大したという。
人事や営業など、他部署からも注目
AI導入の効果について、「まだ本格導入から1カ月ほどなので、数字で表せるような効果はこれから」としつつ、山下氏は期待を寄せる。「新入社員が2人同時にロープレできるようになったことで、1シナリオにかかる時間は半分になりました。現在は11シナリオですが、将来的には全体のシナリオ数の約80%をAIアバターで行い、人によるロールプレイング研修の約4割をAI利用で代替できると考えています」(山下氏)
AIアバターとのロープレは、コールセンター以外の部門からも注目が集まっているいう。「人事部門からは『インターンシップの際、学生にAIアバターを使ってコールセンター業務を体験してもらえないか』、営業本部からは『新人営業職員が初めて電話でアポイントメントを取る前の練習に使いたい』という要望が出ているそうです」(松本氏)。コールセンター部門での好例により、「実際に使えるんだ」という実感が同社全体のAI活用機運を高めているようだ。
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