わずか4分で1億円を突破! 飲めるのは「20年後」なのに、なぜキリンのウイスキーは“即完”したのか:週末に「へえ」な話(4/4 ページ)
発売からわずか4分で1億円を突破し、即日完売したキリンのウイスキー。その実物が届くのは20年後という“異例の設計”には、ある開発者の想いと、緻密な仕掛けがあった──。
乾杯はウイスキー?
こうした懸念があったので、自社のECサイトで販売するのではなく、Makuakeを選んだ。ECサイトで告知すると、「購入者が少ないので、やっぱ無理です」とはなかなか言えない。しかし、Makuakeには「All or Nothing」の方式がある。設定した目標金額に1円でも届かないと、プロジェクトは不成立。購入者には、全額が返金されるという仕組みだ
事業の継続性を担保するために、Makuakeでの販売を試みたが、問題は目標金額である。冒頭でも紹介したように、1億円だ。Makuakeによると、この金額でプロジェクトが成立する確率は、わずか0.1%。高すぎる壁なので、先方から「本当に大丈夫なのか?」と何度も念を押されたという。しかし、事業の継続を考えれば、この金額はどうしても突破しなければいけない。
2025年6月6日。3年半ほどの月日をかけて、ようやく販売当日を迎えた。PC画面を見ると、購入金額の数字がどんどん上がっていく。9500万円、9700万円……そして、わずか4分で目標を達成。その後、予定していた2500本の原酒は7時間で完売した。
キリンにとっても、いや、ウイスキーの常識にとっても、このプロジェクトは型破りな試みといえる。ウイスキーは本来、「味」「原料」「歴史」で勝負するものだが、「人生を共にするウイスキー」は、“飲む理由”そのものを提案しているからだ。
目標金額を達成した日に、小島さんはプロジェクトに関わったメンバーと祝杯をあげた。さぞかしウイスキーで乾杯したのかと思いきや……グラスに注がれていたのはビールだったそうだ。
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