ガバメントクラウドの認知進まず 7割以上が「知らない」:MM総研調査
デジタル庁などが推進する政府・自治体専用のクラウド環境「ガバメントクラウド」の認知率は25%。MM総研が、一般消費者2万1089人を対象に実施した「ガバメントクラウドに関する国民意識調査」で分かった。
デジタル庁などが推進する政府・自治体専用のクラウド環境「ガバメントクラウド」の認知率は25%。ICTの市場調査を手掛けるMM総研(東京都港区)が、一般消費者2万1089人を対象に実施した「ガバメントクラウドに関する国民意識調査」で分かった。
データ主権を重視する声が9割超 自治体の対応に課題も
ガバメントクラウドは、政府が構築した行政機関が共通で利用できるクラウドサービス基盤だ。従来は各自治体が独自にシステムを運用していた。標準化を進めることによってコスト削減やセキュリティ強化、業務効率化を図る狙いがある。
政府は2025年度末までに、自治体の基幹業務システム標準化とクラウド移行を進めている状況だ。自治体のガバメントクラウドへの移行が進む中、ガバメントクラウドについて「全く知らない」と回答した人は75%だった。「名前を聞いたことがある」が17%、「内容を理解しており、説明できる」が8%となっている。
年代別にみると、20代と30代の認知度がそれぞれ約30%となり、年代が高くなるにつれ認知度が下がる傾向が見られた。地域別では、関東と四国が平均を上回り、平井卓也元デジタル大臣の地元である香川県の認知度が32%と最も高かった。
政府や自治体が利用するべきクラウドシステムについては、「積極的に国産クラウドを使うべき」が30%、「どちらかといえば国産クラウドを使うべき」が51%と、8割が国産クラウドを望んでいる。
国産クラウドを使うべき理由については、「日本の法律・規制に合わせやすい」(58%)が最も多く、「データが海外に流出しない」(38%)、「セキュリティ面で安心できる」(34%)が続いた。
一方、「海外クラウドを利用すべき」と回答した人は19%にとどまり、「国内事業者の信用性が低い」「料金が安い」「技術が進んでいる」といった声が寄せられた。
海外の法律や規制の影響を受けずに、政府や自治体が保有するデータを自国内で管理する「データ主権」の動きが世界的に広まっている。特に欧州では、GDPR(EU一般データ保護規則)への対応を背景に、データ主権を確保することを目的とした「ソブリンクラウド」の概念が浸透している。
日本でもこの動きが注目され始めており、国民がソブリンクラウドに対してどの主権が重要だと考えているかを調査した。主権については、「データ主権」「システム主権」「運用主権」「技術主権」「運営主権」「価格主権」の6つが挙げられる。
その結果、6つの項目全てで「重要」だと思う比率が約9割に達した。中でも、「データ主権」で「非常に重要」という回答が最も高く(30%)、「技術主権」「システム主権」(同率21%)が続く。
一方、各主権に対しての自治体への取り組み状況については、「十分に実施できている」と回答した人は1割に満たなかった。また、「不足している」「実施できていない」がいずれも約3割となり、そもそも「知らない」と回答した人が約4割を占めた。
最後に、個人情報を活用することによって便利にしてほしい分野について尋ねた。医療・健康、ライフライン(電気・ガス・水道)、消防・防災が上位に入り、戸籍や健康保険などの情報は国産クラウドに保存すべきとの意見が多かった。
現状、ガバメントクラウドに認定されているのは海外4社と国産1社(条件付き認定)のみで、国産クラウドを選びにくい状況になっている。今後は、国産クラウドの拡大やデリバリー体制の整備が不可欠だ。政府はクラウドプログラムを特定重要物資に指定しており、国産クラウドの活用が求められる領域を明確にすることが今後の課題となる。
調査は2025年3月、インターネットで実施した。
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