「身の丈」に合ってなかった? 再開発で「中断」「延期」相次ぐ 中野・津田沼・五反田から学ぶ(3/3 ページ)
中野、津田沼、五反田などで計画していた再開発がとん挫している。一体何が起こっているのか。
計画では駅に面する緑地部分を縮小して、低層階の面積を拡大。低層階から分岐する多棟構成の施設で、地下1階〜地上4階までが商業施設、分棟にオフィスや文化ホールが入居する構造だ。地上52階建て・高さ187メートルのタワマンも建てる計画である。
2027年に着工、2031年の竣工を目指していたが、2025年5月に野村不動産が建築費を理由に再開発の中断を市に申し入れている。部分的な再開も検討し、現在は設備の点検にも着手しているという。
サンプラザやモリシア津田沼の再開発事業で高層住宅を含めるのは、住宅販売による収入をあてにしているためだ。東京23区内の場合、1戸当たり1億円と仮定すれば、100戸で100億円の収入が得られる。要は複合施設部分だけでは収益が成り立たないのである。
二転三転した「TOCビル」
卸売業者が数多く入居するビルとして知られる五反田のTOCビルは1970年に竣工。地下3階、地上13階建ての横に広いビルで、オフィスや飲食店、小売店も入居している。
2021年に事務所や店舗、住宅などが入居する地上30階建てのビルに建て替える計画を発表しており、2023年春の着工を目指していたものの、建設関連費用の高騰を理由に延期。2024年3月に閉館したが、翌月に計画の見直し・再延期を公表している。分譲事業の追加を検討するとしており、中野サンプラザ再開発の見直し案と同様、住宅に頼らざるを得ない状況がうかがえる。結局、2024年9月に現ビルのまま営業を再開し、工事着工は2033年ごろを予定している。
あらためて、首都圏で再開発事業の中止が相次ぐ主な要因は建築費の高騰だ。建設物価調査会が公表する「建築費指数」は2015年を100とすると、現在140前後で高止まりしている。人件費の高騰や円安が影響し、強気な開発が難しくなっているわけだ。適切に維持管理すればRC造のビルは100年もたせることも可能とされる。身の丈に合った計画を立て、長期利用を検討する時代に来ている。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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