常陽銀行が「1500人の営業」を分析して分かった、スキルと売上成績の関係
めぶきフィナンシャルグループは2025年3月期有価証券報告書で、子会社である常陽銀行における従業員のスキルと、営業成績との関係性を示す情報を開示した。Institution for a Global Societyが提供する能力測定ツール「GROWシリーズ」により取得した人材のスキルデータを活用している。
めぶきフィナンシャルグループは2025年3月期有価証券報告書で、子会社である常陽銀行における従業員のスキルと、営業成績との関係性を示す情報を開示した。Institution for a Global Society(東京都渋谷区)が提供する能力測定ツール「GROWシリーズ」により取得した人材のスキルデータを活用。能力データに基づく人事施策の効果測定やROIの定量化を通じて、経営判断や人材戦略の精度を高める狙いだ。
資格取得・研修によって成果が向上 どんな仕組み?
GROWは、企業ごとの人材要件に応じたスキルやコンピテンシーを可視化する従業員の能力測定ツール。自己評価と他者評価による360度評価に加え、AIによるバイアス補正(特許技術)を導入することによって客観性を担保する。
「ISO30414」といった人的資本ガイドラインに準拠した開示対応だけでなく、業界他社やグローバル基準に基づいたベンチマーク評価も可能だ。
常陽銀行はGROWを活用し、約1500人の営業担当者のスキルを評価した。そのデータと営業成績の関係を統計的に分析した結果、営業担当者のスキルレベルが1段階上がると、法人部門は平均12%、個人部門では平均6%と営業成績が向上する傾向がみられたという。さらに、特定の研修受講や資格取得が、スキルや営業成果の向上に寄与していることも確認された。
2023年3月期から有価証券報告書による人的資本の情報開示が義務化された。企業には「人材戦略」や「多様性」など非財務情報の説明責任が課されている。こうした背景により、人的資本の見える化や企業価値の関係を定量的に示す取り組みが注目されているものの、「人材の能力」と「財務成果」の関連を実証した事例はまだ少ない。
めぶきFGでは、常陽銀行や足利銀行を含むグループ内で「知識」と「実践力」を組み合わせた従業員スキルの可視化や、人的資本投資とスキルの関係性の分析を進めている。
常陽銀行では、2023年度から同社が運営事務局を務める「人的資本理論の実証化研究会」にも参画している。今回の有報開示は、スキルデータを用いた人的資本投資の費用対効果を可視化する先進事例となった。
Institution for a Global Societyは、今後もGROWの提供と研究会運営を通じて、企業の戦略に応じた人材要件の定義、能力の可視化、投資効果の検証を支援する方針だ。こうした取り組みによって、企業の中長期的な価値向上や投資家評価の向上のみならず、従業員一人一人の納得感ある成長やキャリア自律、モチベーション向上に貢献することを目指す。
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