全員が「一律週40時間」働く必要ある? “短時間正社員”が問い直す、職場の常識:働き方の見取り図(2/3 ページ)
2025年の骨太方針に明記された「短時間正社員」制度。ただ、フルタイムで働いている正社員からは「不平等」という声も。短時間正社員という制度の意義を掘り下げてみると、従来の働き方の常識に風穴を開け、社会に還元されるメリットが見えてくる。
労働時間は“平等”でも、「成果」や「事情」は個々に違う
営業職だと、同じように1日8時間勤務していたとしても、Aさんの売り上げは100万円で、Bさんの売り上げは50万円といった差が生じることがあり得ます。この場合、成果の開きは倍です。
もし、Aさんが1日4時間しか働かなかったとしても50万円の売り上げを立てられるなら、8時間働いたBさんと成果は等しくなります。1時間当たりに生み出される成果を軸に比較すれば、Aさんの勤務時間はBさんの2倍の価値に相当するということです。
時間当たりで生み出される成果が人によって異なる点に着目すると、誰もが同じように週40時間働くことを原則とする考え方の方がむしろ不平等に見えます。仕事処理が早くて生産性が高い人にはどんどん新たな仕事が振られ、他の人の分までカバーすることもあります。それなのに、自分の仕事も終えられない人と勤務時間が同じだからと給与が変わらないとしたら平等だと言えるのか疑問です。
個々に備わる条件が異なるという視点に立つと、不平等要素は他にもさまざまな場面で見受けられます。例えば通勤距離。自宅から職場までが近い人と遠い人とでは、通勤時間に大きな差が生じます。この差は、そのまま生活の中の可処分時間の差となり、遠方通勤者はその分、日常の時間を犠牲にしているとも言えます。通勤時間が短い人は、その時間を使って副業して追加の収入を得ることも可能です。
また、育児や介護など家庭の事情によって残業が一切できない人もいれば、何時間でも厭(いと)わず残業できる人もいます。後者の場合には、定時内に仕事が終わらなかったとしても残業して完遂するという選択肢があります。さらには残業手当分の給与も上乗せされます。
中には、残業できない人が定時内に仕事を終わらせようと必死に取り組む姿を尻目に、残業や休日出勤を厭わずこなせるからとおしゃべりしたり、頻繁にタバコ休憩をとったりする人もいます。挙句、満足な成果が出せていなかったとしても、定時内しか働けない人より高い給与を得たりするのです。そんな状況に嫌気がさした経験のある人や、苦々しく感じている経営者や管理職は少なくないと思います。
もしも、決められた成果が早く出せれば、その分早く帰宅できて給与には差が出ないとしたら、能力が高い人ほど早く帰宅できることになります。つまり、人によって能力差があることを前提にすれば、勤務時間に差が生じるのはむしろ自然なことなのです。
さらに職場と自宅の距離、家族構成、健康状態、介護や育児の有無など、社員一人一人の事情は異なるのが普通ですし、テレワークしやすい職務とそうでない職務もあります。職場に集う全員が、全く同じ条件を備えていることはあり得ません。
社員の事情がそれぞれ異なる前提に立つと、果たすべき役割を果たし、出すべき成果を出してさえいれば、勤務時間が人それぞれ異なる方が当たり前です。
それなのに週40時間勤務を原則とする一律の枠組みの中に無理矢理押し込まれてしまうのは、その方が職場にとって管理しやすいからに他なりません。言わば、職場の都合に全社員が合わせる一律適用型労働です。ほとんどの職場では、一律適用型労働が常識になっています。
それに対し、各社員の都合に職場が合わせる個別最適型労働の考え方に転換した場合、勤務時間は人それぞれ異なるのが普通になります。必然的に短時間正社員という働き方も選びやすくなるでしょう。
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