「家事しない男性」が元凶……? 働く女性の邪魔をする「ステルス負担」はなぜ生まれるのか:働き方の見取り図(1/3 ページ)
2025年は男女雇用機会均等法が制定されてから40年。その間の日本社会では何が変わり、何が変わっていないのか――。女性活躍をめぐる変化を整理しつつ、課題のポイントを確認する。
「米は買ったことがない」――。そんな発言がきっかけで、辞任することとなった江藤前農林水産大臣。釈明会見で発した「妻に怒られた」といった言葉も昭和的などと批判されて、火に油を注いだ感があります。
家のことは妻任せという性別役割分業を当然視しているかのような発言だけに、妻に怒られたという表現は時代の流れとズレた印象を受けます。ただ、筆者がより気になったのは、米が足りない時に妻が買っていたことを江藤氏が知らなかった点です。
家事に携わる男性も増えつつある中、江藤氏の発言に違和感を覚えた男性は少なくないと思います。一方、妻に怒られたということは、女性の声に耳を傾けたとも受けとれます。女性の声に耳を貸そうとすらしなかった時代に比べれば、前進してはいるのかもしれません。
2025年は男女雇用機会均等法が制定されてから40年。女性活躍推進法制定からは10年を迎えました。
その間の日本社会では何が変わり、何が変わっていないのでしょうか。女性活躍をめぐる変化を整理しつつ、課題のポイントを確認してみたいと思います。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
40年間でこんなに変わった日本の職場
男女雇用機会均等法が1985年に制定されて以来、日本の労働環境や家庭の在り方はさまざまな変化を遂げてきました。大きく5点挙げたいと思います。
1つ目は、女性就業者数の増加です。
労働力調査を確認すると、1985年の女性就業者数は2304万人。それが2024年には3082万人と778万人増えています。同じ年に男性も3503万人から3699万人と196万人増えているものの、女性の増加数はその約4倍です。
M字カーブに見られる驚きの変化とは?
次に、M字カーブの台形化が進んでいること。
横軸を年齢階級、縦軸を労働力率としてグラフにすると、一度上昇した後に下降線をたどり、また上昇する曲線を描きます。この形状がアルファベットのMに似ていることからM字カーブと呼ばれますが、男女共同参画白書の「女性の年齢階級別労働力人口比率の推移」を見ると、このM字の底が上昇し、台形に近付いてきているのが分かります。
男女雇用機会均等法が制定される前の1982年には、M字の底が49.5%です。それが40年後の2022年には大きく上昇して78.9%。結婚や出産を機に仕事から離れていた女性が働き続けるようになったり、転職して仕事を続けようとするケースが増えたことを表す変化と言えます。
3点目は、男女間の賃金格差縮小です。
労働政策研究・研修機構が賃金構造基本統計調査をもとにまとめた男女間賃金格差データによると、男性を100とした場合の女性の所定内給与額は1985年に59.6。それが2023年には74.8と15.2ポイント上昇し、格差が縮まってきています。
4点目は女性正社員比率の上昇が挙げられます。
労働政策研究・研修機構が公表している雇用形態別雇用者数データをもとに算出すると、正社員に占める女性の比率は1985年に29.7%。それが2024年には35.6%へと上昇しました。
5点目は、女性管理職比率の上昇です。
雇用均等基本調査の役職別女性管理職等割合の推移を見ると、10人以上の企業における課長相当職以上の女性比率は2009年に10.2%。それが2023年には12.7%になっていて、緩やかながら上昇してきています。
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