「家事しない男性」が元凶……? 働く女性の邪魔をする「ステルス負担」はなぜ生まれるのか:働き方の見取り図(2/3 ページ)
2025年は男女雇用機会均等法が制定されてから40年。その間の日本社会では何が変わり、何が変わっていないのか――。女性活躍をめぐる変化を整理しつつ、課題のポイントを確認する。
女性の6割が望む「夫婦対等に共働き」
これら労働環境の変化と並行して、家庭環境も変わってきました。
まずは共働き家庭の増加。
男女共同参画白書によると、妻が64歳以下の世帯数は1985年に専業主婦世帯936万。共働き世帯はそれより少ない718万です。ところが1990年代に逆転し、2023年には専業主婦世帯404万に対し共働き世帯は1206万とほぼ3倍になりました。
次に、男性の育児休業取得率の上昇。
雇用均等基本調査によると1996年の男性育休取得率は0.12%とほぼゼロの水準でした。それが2023年には30.1%まで劇的に上昇しています。取得期間の短さなど課題はあるものの、男性育休取得率が100%の会社も出てきています。いまや、男性が「育休を取得します」と言っても冗談だと思われなくなりました。
3点目は、性別役割分業意識の緩和です。
統計にも男性育休取得率の上昇などの形で表れてきていますが、平日の昼間にスーパーで見かける男性の数は、ここ数年のうちに確実に増えたと感じます。在宅勤務する人が増えたことも関係しているかもしれませんが、家事や育児などの「家オペレーション」に携わる男性が徐々に増えてきている様子がうかがえます。
こうした変化を振り返ると、世の中は仕事も家庭も男女が同等に担っていく方向へと進んでいることが感じられます。子どもたちが通う学校でも、児童会や生徒会長を女子が務めることは珍しくありませんし、大学進学率にも男女差がほぼ見られなくなりました。
私が研究顧問を務めるしゅふJOB総研において、10年後の未来を想像した時に増えそうな夫婦のワークスタイルについて調査したところ、6割以上の女性が「夫婦対等に共働き」と回答しました。男女が共に働き、共に家庭運営する傾向は、今後さらに強まっていくことが予想されます。
その結果、家庭と仕事の両立は、性別に関係なく誰しもが向き合う課題となりました。社会は、家オペレーションを自らが主体となって担う意識を全員が持つ「一億総しゅふ化」に向かっていると言えるでしょう。
一方で、かつて主流だった専業主婦世帯が減少し続けているように、男性だけが100%仕事に集中できる状況はレアケースになっていきそうです。
こうした変化の背景には、女性の仕事は腰かけだと見なされたり、家オペレーションは女性が担うものだといった偏見と戦ってきた先人たちの取り組みがあります。男女雇用機会均等法制定などがアリの一穴となって、時代を大きく前進させました。
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