イオンは二刀流、ヨーカドーは一時撤退も 群雄割拠のネットスーパー、各社の戦略(4/4 ページ)
近年、スーパー各社が参入を続けるネットスーパー。各社の戦略や市場の将来性を分析する。
大手ECは地場のチェーンと手を組む
Amazonは直営の「Amazonフレッシュ」ほか、食品スーパー各社とも提携しており、ライフや成城石井と協業する。
Amazonフレッシュは2017年に開始したサービスで、倉庫出荷型。首都圏の1都3県が対象エリアだ。通常のスーパーのように野菜や精肉も販売し、チルド食品や冷凍食品も取り扱う。最低注文金額はGreen Beansと同じく税別4000円。プライム会員の場合、通常配送料は490円だが、1万円以上の買い物で送料が無料となる。
関東・関西の一部で展開するライフのネットスーパーでは、商品を実店舗から配送する。店舗で調理した総菜のほか、PBブランド「スマイルライフ」の商品も販売している。同様に愛知県地場の「バロー」とも手を組み、PB商品や店内調理のパンを販売している。
Amazonが地場のチェーンと手を組むのはエリアを拡大するためだ。直営のAmazonフレッシュはエリアが関東に限られる。国内のネットスーパーは黎明期を抜け出したばかりであり、Amazonでも拠点を構えてこなかった。楽天も同様に直営の倉庫出荷型ネットスーパー「楽天マート」を運営するが、対象エリアは関東・関西の一部に限られる。なお独自プラットフォーム「楽天全国スーパー」内では「コモディイイダ」や「ベイシア」の店舗出荷型サービスを提供している。
経済産業省によると2022〜23年におけるBtoC物販全体のEC化率はいずれも9%だが、食品のEC化率は4%台にとどまる。食品のEC化率が低いのは、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど食品を販売する実店舗の密度が大きいためだ。
食品の選好はその日の気分で変わるため、見通しが立たないことも関係しているだろう。市場規模は伸びているが、ヨーカドーが苦戦するように前途洋々とはいえない。ネットスーパーを普及させるには、実店舗から客を奪う必要があり、場合によっては既存事業との共食いにもなりかねない。国内でネットスーパーは定着するのか、各社の動向に注目したい。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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