「生産性が高い人は、高い人同士でよく話す」 イトーキ×松尾研、“成果が出るオフィス”の条件を探る(1/2 ページ)
オフィス家具大手のイトーキとAI開発を手掛ける松尾研究所は、「生産性」に関する共同研究を進めている。行動履歴やライフログデータをもとに分析を重ねるなかで、睡眠時間、働く場所、さらには人間関係まで、生産性との相関が次々と明らかになっている。
「生産性が高い人は、高い人同士でよく話し、低い人は低い人同士でよく話す」――そんな傾向が、ある実証実験で見えてきた。
オフィス家具大手のイトーキとAI開発を手掛ける松尾研究所は、「生産性」に関する共同研究を進めている。行動履歴やライフログデータをもとに分析を重ねるなかで、睡眠時間、働く場所、さらには人間関係まで、生産性との相関が次々と明らかになっている。イトーキが生産性に着目する背景には、オフィスづくりにおける、ある変化があった。
「行きたくなるオフィス」をどう評価する?
出社が前提の働き方からコロナ禍でのリモートワークを経て、再び出社回帰の流れが強まっている。それに伴い、現在、オフィスづくりの現場では「行きたくなるオフィス」がトレンドだ。「コロナ前までは、企業はオフィスをコストがかかるものだと考えていた。しかし、アフターコロナでは、オフィスは投資するものであり、特に人材不足の昨今は人的資本への投資という考えに変化している」とイトーキの湊宏司社長は説明する。
こうした企業側の意識の変化は、「生産性をどう測定するか」という課題を引き出した。「オフィスづくりを投資と考えるならば、当然のその投資対効果を測定する必要がある。その評価軸となるのが生産性だ」(湊氏)
しかし、生産性を評価軸にすることには、大きく2つの課題があった。1つは生産性の定義だ。日本生産性本部によれば、生産性はアウトプットをインプットで割ったもの。しかし、人によって捉え方は異なるため、共通した評価軸を作ることが難しかった。
2つ目は、生産性を向上させるために必要な影響因子が多いことだ。「何が生産性を高めるのか」は、仕事内容や組織によって大きく異なり、その全体像を捉えることは難しい。イトーキは「オフィスは生産性を上げるために存在する」としており、オフィスづくりを手掛ける同社にとって「生産性」の解明は事業においての重要課題だった。
そこでイトーキは、AI分野の第一人者である松尾豊氏が技術顧問を務める松尾研究所と協業し、共同研究を開始した。研究では、従来のオフィス稼働データや主観的なパフォーマンスサーベイデータに加え、オンライン上の行動履歴やウェアラブルデバイスによるライフログデータを活用。働く環境、働き方、働く人の生産性との関係性を多面的に分析し、「生産性の定義と向上に寄与する行動・環境モデルの構築」と「生産性の客観的な計測・検証手法の確立」を目的に研究を進めている。
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