AIで「自己肯定感」が上がるZ世代 危うくなる職場のリアルコミュニケーション
履歴書作成サービスを提供する米Resume.orgが6月に発表したレポートによると、Z世代の従業員は、職場における感情的知性(エモーショナル・インテリジェンス)に関する課題に対処するため、AI活用を進めているという。
履歴書作成サービスを提供する米Resume.orgが6月に発表したレポートによると、Z世代の従業員は、職場における感情的知性(エモーショナル・インテリジェンス)に関する課題に対処するため、AI活用を進めているという。例えば、上司のメールの口調を理解したり、それに対する適切な返信文を作成したりする場面でAIが使われている。
調査によれば、Z世代の労働者の76%がAIチャットボットを使用しており、そのうち94%は「職場の問題に対処するためにAIを利用した経験がある」と回答。また、およそ3割が「常にAIを使用している」と答え、40%が「頻繁に使用している」としている。
AIに相談して「自己肯定感」が上がるZ世代
Resume.orgのキャリアアドバイジング責任者であるカラ・デニソン氏は「Z世代の労働者は、AIに相談することで自分の考えが肯定され、自信を得られると感じている。AIは即時かつ評価を伴わないフィードバックを提供してくれるため、デジタル環境に慣れ親しんだZ世代にとって、安心できる存在になっている」と語っている。
この調査は、米国のフルタイム勤務のZ世代従業員1000人以上を対象に実施。その結果、AIを使用した後に他者とのコミュニケーションの仕方を変えたと答えた人は全体の約半数に上った。うち3分の1は「以前より自己主張するようになった」とし、26%は「謝罪したり、自ら責任を取るようになったりした」と回答している。
Z世代の従業員がAIチャットボットを最も頻繁に使用する目的は「文面の口調の解釈」であり、75%が「メールやSlackメッセージ、その他のデジタルコミュニケーションの内容をAIに分析させたことがある」と答えている。また、誤解や上司・同僚との直接的な対立といった感情的な場面においても、AIを活用していることが明らかになった。
Z世代の従業員の多くが「AIチャットボットは職場での対立を整理するのに役立つ」と感じている一方で、必ずしもポジティブな結果ばかりではない。43%は「AIが自分の偏った反応や思い込みを強化した」と答え、17%は「AIの利用により個人としての責任を取りにくくなった」と回答している。
デニソン氏はこうした傾向について「最大のリスクは、個人としての責任感が希薄になること」と警告する。「AIツールが常にユーザーの見解を無条件に肯定し、異なる視点を提示しない場合、思考の柔軟性が失われ、自己反省ではなく他責傾向が強まる可能性がある」(デニソン氏)という。
同氏は、AI利用には一定の利点があると認めつつも、チャットボットには繊細な状況に必要な「感情の機微」や「共感力」が欠如していると指摘する。例えば、AIは相手のボディーランゲージを読み取ることも、権力構造の不均衡を理解することも、組織固有の文脈を把握することもできない。そのため、AIユーザーは、現実の職場で得られる対人経験や成長の機会を逸してしまうおそれがあると述べている。
「健全な職場でのコミュニケーションは、共感力、傾聴姿勢、そして説明責任に基づくものである。AIはこれらを補完することはできても、代替することはできない」と、デニソン氏は強調する。
Resume.orgの別のレポートによれば、Z世代の従業員の過半数がAIツールを「同僚」あるいは「友人」と見なしており、ほぼ半数が「上司に質問するよりもチャットボットに聞きたい」と考えているという。Z世代の労働者たちは、AIを使って業務を遂行し、困難な意思決定を行い、助言を求めている。
こうしたAI活用や職場における感情的対立が広がる中で、人事担当者は「感情的に健全な職場文化」を構築する役割を果たすべきであると、コンサルティング企業の米McLean&Companyは提言している。同社は「職場で感情を避けるのではなく、感情と仕事が共存できるよう主体的に働きかけることによって、全ての従業員が能力を発揮できる環境を実現すべきである」としている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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