「宝飾店」業界が好調に推移している。帝国データバンクの調査によると、2025年1〜7月に発生した宝飾店の倒産は5件。2024年の同期間(11件)を大きく下回り、このペースで推移すれば、通年では過去20年間で最少となる見込みだ。
好調の「宝飾店」 何が支えた?
宝飾店の経営は、国内外の富裕層による販売増や中古ジュエリー需要の増加、国際的な貴金属価格の上昇などに支えられてきた。2024年度の損益動向をみると、前年度から増益となった企業は50.5%で、過去20年間で最多となった。業績悪化した企業は45.0%だが、この数字も19年ぶりに4割台に低下した(「減益」18.9%、「赤字」26.1%の計)。
株価や不動産価格の上昇を背景に、富裕層や訪日客を中心に高額なファッションジュエリーの販売が伸長。特にアジア圏からの観光客向け中古高級ブランド品の販売需要や、買い取り販売が好調だった。またネット販売でも若い世代を対象にしたSNS広告や口コミにより、安価でデザイン性の高いシルバーアクセサリーなどの需要が高まっていた。
なかでも歴史的な高値圏で推移する金、銀やプラチナといった貴金属は投資対象として購買需要が高まり、業績アップにつながった。地金販売や貴金属買取販売をメインとする宝飾店では、貴金属の仕入価格が上昇したものの需要の高まりから価格転嫁が進み、販売数量が前期並みながら売上高を大幅に伸ばしたケースが多かった。
一方、金価格は国際情勢や金融政策によって変動するほか、素材の価格高騰でジュエリー製品の値上げが続き、特に国内向けでは購買意欲の落ち込みがみられる。さらにフリマアプリとの競合に加え、インバウンドについても中国からの訪日客を中心に減少傾向との声も聞かれ、好調な勢いは曲がり角に差し掛かりつつあるようだ。
帝国データバンクは「富裕層やインバウンド向けのイベント開催や10万円弱の購入しやすいカジュアル商品の拡充、オンライン販売やSNSを活用したプロモーションなど、多様な販売チャネルを通じた新たな顧客層の開拓戦略が注目される」とコメントした。
調査の集計期間は2000年1月1日〜2025年7月31日で、集計対象は負債1000万円以上、法的整理による倒産。
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