Claudeを超えた？ GPT-5「実務で使える」5つの機能：その悩み、生成AIが解決（2/3 ページ）

OpenAIの新モデル「GPT-5」シリーズがついにリリースされた。モデルの自動選択機能の追加や旧モデルの一括廃止など、ChatGPTの使い方は大きく様変わりしている。本記事では、この大型アップデートを業務で最大限活用するために知っておきたいポイントを、実際の出力例とともに解説する。

[酒井麻里子，ITmedia]

文章構成と表現力はClaudeを超える水準

　GPT-5シリーズは、文章構成力と表現力の双方で進化した。文章力については、これまでプレビュー版として提供されていたGPT-4.5で比較的優れた出力が得られていたが、その特徴がGPT-5にしっかり引き継がれている。

　旧モデルの4oの場合、文章構成の理解力は高いものの、文体の滑らかさや読みやすさの面で不足感があった。GPT-5ではこの弱点が解消されている。

　一方、人間味のある自然な文章で定評のあるClaudeは、文章の構成力においてはやや弱い印象がある。GPT-5はこの構成力と表現力を両立し、総合的にはClaudeを超える水準に到達したといえる。

　今回は、「古い友人にできるだけ角を立てずに、借金の催促と過去の過失の謝罪を求める手紙を書く」という、少々面倒なシチュエーションを設定して文面を出力してみた。気づかいをしつつ、伝えるべきことはきちんと伝えることが求められる状況だ。

【プロンプト】

10年間借金を返してくれない知人に、手紙を送りたいと思っています。

この知人は、借金の以前から貸していたレコードプレイヤーも壊しました。この事実はお金を貸した後に発覚し、謝罪はありません。貴重なものだったので、借金の返済以上に、まずはこの件について何らかの誠意を示してほしいと考えています。

過去には良い友人としてつき合っていた時期もあったので、できるだけ角を立てずにこちらの意向を伝えたいと考えています。

まずは相手の近況をうかがう内容で書き出し、こちらの近況として、「変わらず元気に過ごしている」「庭にカブトムシがやってきて夏を感じた」という話題を入れ、その後本題に入りたいと考えています。

強く物を言うと反発して意固地になってしまうタイプの人なので、表現を工夫したいです。

読みやすく長くなりすぎず、素直な気持ちになれるような内容の文面を考えてください。

　以下が、出力結果だ。GPT-4oはきつい印象を受ける表現が残ったのに対して、GPT-5は短めの文面で必要なことを端的に伝えながら、「角を立てない表現」という条件をしっかり守っている。

【回答】（GPT-5）

お元気でお過ごしでしょうか。

こちらは変わらず元気にしています。先日、庭にカブトムシがやってきて、夏の訪れを感じました。昔いっしょに過ごした夏の日のことを、ふと思い出しました。

さて、少しお話したいことがあり、お手紙を書いています。

実は、以前お貸ししていたレコードプレイヤーのことが気になっていました。とても大切にしていたもので、壊れてしまったと聞いたときは少し残念な気持ちになりました。思い出の品でもあったので、何らかの形でお気持ちを示していただけたらうれしく思います。

また、以前お貸ししたお金の件も、ずっと気にかけています。お互い気持ちよくこれからもやりとりできるよう、落ち着いた形で整理できたらと願っています。

暑さの厳しい時期ですので、どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。

またお返事いただけるとうれしいです。

【回答】（GPT-4o）

お元気ですか？

まだまだ暑い日が続きますね。体調など崩されていないでしょうか。

こちらは相変わらず元気に過ごしています。

先日、庭にカブトムシがやってきて、なんだか子どもの頃の夏を思い出して懐かしい気持ちになりました。

さて、今日はひとつ、お伝えしておきたいことがあってお手紙を書いています。

ずいぶん前になりますが、お貸ししていたレコードプレイヤーの件、実は壊れていたことを後から知りました。

大切にしていたものだったので、当時そのことに一言もなかったことが、正直少し残念でした。

また、それとは別にお願いしていた借りたお金の件も、もう10年ほど経つかと思います。

当時は信頼していたからこそ、あえて書面にもせず、返済の期限もはっきり設けずにいましたが、年月が経った今、改めてこのままにしておいてよいのか考えるようになりました。

もちろん、事情があってすぐに動けないこともあると思いますし、今さら急にどうこう言いたいわけではありません。

ただ、お互い気持ちよく日々を過ごすためにも、どこかのタイミングでこの件に区切りをつけられたらと願っています。

例えば、レコードプレイヤーの件についても含めて、何かしらあなたの言葉やお気持ちを聞かせてもらえたら、それだけでもありがたく思います。

昔のように、また自然に話せるようになるといいなと、心から思っています。

暑さ厳しい折、くれぐれもご自愛ください。

またお便りしますね。

　参考にClaudeの最新モデルであるOpus 4.1でも同じプロンプトで出力してみた。こちらも「角を立てない表現」という条件は守られているものの文面が長めで、「感情を重視しすぎ」という印象を受ける。

【回答】（Claude Opus 4.1／参考）

お久しぶりです。お元気にされていますか。

最近はどのようにお過ごしでしょうか。

私の方は変わらず元気に過ごしています。先日、庭にカブトムシがやってきて、すっかり夏だなあと感じました。子供の頃を思い出して、なんだか懐かしい気持ちになりました。

ところで、以前から気になっていたことがあって、今回お手紙を書かせていただきました。

実は、お預けしていたレコードプレイヤーのことなのですが、壊れてしまったと後から聞いて、正直なところ少し寂しい気持ちでいます。あれは私にとって思い出深いものだったので、何か一言でもいただけたら、気持ちの整理がつくかなと思っています。

それと、だいぶ前のことになりますが、お貸ししたお金のことも、もしご都合がつくようでしたら、少しずつでも構いませんので、ご連絡いただけると助かります。

昔は本当に楽しい時間を過ごしましたね。あの頃のように、わだかまりなく話せる日が来ることを願っています。

お返事は急ぎませんので、○○さんのタイミングでご連絡いただければ幸いです。

暑い日が続きますが、どうぞご自愛ください。

　「角を立てない」という表現上の条件と、「必要事項をきちんと伝える」「読みやすく長くなりすぎない」という内容面の条件のバランスがとれた出力のできるGPT-5は、かなり優秀といえる。このバランス感は、ビジネスにおいて円滑なコミュニケーションを維持するためには特に重要だ。

　もちろん、文章表現には好みがあり、絶対的な正解が存在するものではない。ChatGPTとClaudeで同じ条件で文章を生成したときに、優劣つけがたいテイストの異なるものが出力されるケースもある。

　1回の指示でバランスのとれた文章を生成したいときはChatGPTが強みをもつ一方で、表現にこだわる文章を書きたいときは、ChatGPTとClaudeを併用したうえで「いいとこ取り」をする使い方も有効だろう。