「AI時代のSEO対策」勝ち抜くための2つのポイント 世界の専門家が語る(2/2 ページ)
呼ばれ方はさまざまあるが、企業はAIに自社のコンテンツやブランドをどう認識させて推奨してもらうのか、必死で模索している最中である。AI時代のSEO対策の在り方について「これまでのSEO対策と変わらない」とする意見も多いが、実際のところどうなのだろうか。博報堂メディア環境研究所は、米国、中国、イスラエルのAI専門家にインタビューをし、その結果を紹介した。
AIによる「汚染」で“もう限界”? インターネットそのものが変化する可能性
続いて博報堂メディア環境研究所 所長 山本泰士氏が『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ, 2024)の著者であり、GenesisAI 代表取締役社長/CEO 今井翔太氏のインタビューを紹介した。
「今後、細やかな嗜好に対応できる『ハブ』が重要になる」と語る今井氏。ここで言う「ハブ」とは、かつてのYahoo! ディレクトリ検索のようなものをイメージすると分かりやすい。有用な情報を束ねたAI向けのリンク集のようなものをつくっておくことで、SEOの上位に表示されないようなコアな情報にもAIが到達しやすくなるというのである。
今井氏は「このハブの作成は、信頼の高い既存のメディア企業が担うべきだ」とも指摘する。権威あるメディアが作成したハブであれば、いずれAIエージェントを開発・提供している企業側から「使わせてほしい」というリクエストが来るはずだと今井氏は見ているのだ。
さらに今井氏は、「そろそろインターネットには限界が近付いている。AIが生成したコンテンツによる汚染が進み、もはや正しい情報が何だったのか分からなくなっているからだ」と語り、新たに“第二のインターネット空間”をつくって、そこにハブをつくるとよいのではないかと言及した。
加えて、「AI研究者の私が言うのもなんだが、AIに汚染される以前、“2022年以前”のデータは、今後、貴重な資産となるため、極めて丁重に扱うべきだ。AIがどれだけ発展しても、歴史やブランドはつくれない。AIに置き換えられないものは大切に守ったほうがよい」と語った。
こうした一連の今井氏の発言を受けて、博報堂DYホールディングスCAIO 森正弥氏は2019年にWaymo(Googleの自動運転車開発部門から分社化)が公開した論文にまつわる次のエピソードを紹介した。
Waymoによると、優秀なドライバーの走行データだけではなく、未熟なドライバーのデータも含めて多様な走行データを学習させた方が、自動運転の性能が大幅に向上したという。
「そう考えると、第二のインターネットをつくる際には、AIに読み込んでほしい上質なデータや優位な情報だけを恣意的に選ぶのではなく、ネガティブな情報や失敗事例も含めた“本物のデータ”を整備することが重要ではないか。まさに今、企業としての在り方が問われている」と森氏は警鐘を鳴らす。
これに対し山本氏は、「企業としては、生活者とAIの間に割り込んで『こっちにもっと良い情報があるから、こっちを見てよ』と言いたくなる気持ちは分かる。しかし、もっと大きな視点で、AIという存在を組み込んだ新たな社会、第二のインターネットの世界をこれからつくっていくんだという気概をもって、社会のために“本物のデータ”の提供に協力していくべきなのだろう」と語った。
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