2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

AIに恋し、悩みも相談――インタビューで明らかになった、“想像を超える”生活者の生成AI活用術(1/2 ページ)

人とAIの関係は、これからどうなっていくのだろう。博報堂が日本、中国の生活者を対象に実施したインタビュー調査では、“驚きの”生成AI活用の実態が見えてきた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

 生活者は実際、どんなふうに生成AIを利用しているのだろうか。

 博報堂メディア環境研究所が行った「グローバルメディアテック調査」によると、いつもは新しいテクノロジーに対して保守的な人が多い日本人(調査対象は1都3県)でさえ、5割超が生成AIを利用した経験を持つという。これでも世界に比べればやや遅れているのが現状だ。LAやロンドンでは7割以上、上海では9割以上に利用経験があるそうだ。

 東京で最も多いのは「勉強・学習」(48.1%)、「オフィスワーク」(46.2%)とイメージ通りだが、約3割は「AIと対話」「暇なとき」「趣味・娯楽/遊び」に利用しており、約2割は買い物にも活用している実態が見えてきた。

 これは想定の範囲内だという人も多いだろう。「AIはどんな存在ですか」という質問に対しても、東京では「道具」「自分とは無関係な存在」と、AIとは一定の距離を保った回答が多く見られた。


生成AI、上海では9割以上 が利用経験あり(提供:博報堂、以下同)

都市別 生成AI利用シーンTop5

 ところが、生成AI先進国の上海では、「趣味・娯楽」(46.2%)、「投資やお金の管理」(38.8%)が上位の利用目的となっており、約3割がAIの存在を「友人」「仲間・同僚」「秘書」と回答。東京よりも上海のほうが人とAIの距離は近く、“AIの擬人化”が進んでいることが分かる。

 人とAIの関係は、これからどうなっていくのだろう。博報堂が日本、中国の生活者を対象に実施したインタビュー調査では、“驚きの”生成AI活用の実態が見えてきた。

 この記事は博報堂メディア環境研究所が実施したフォーラム「AI as Media〜メディアとしてのAI〜」の内容を基に、前後編で紹介する。

【日本編】「経営の熱血コーチ」「愚痴を聞いてもらう」 3つの傾向

 まずは日本で行った「AIと仲良く暮らす生活者インタビュー」の結果を見ていく。インタビュイーは「ビジネス以外の目的で最低でも週1回以上AI関連サービスを利用している」生活者だ。

  • 「ダイエットしているときにAIで食べるもののカロリー計算をしながら自炊をしている」(29歳・女性)
  • 「買い物をするときにAIに複数の口コミサイトの情報を一元的な比較表にしてもらった」(50歳・男性)
  • 「AIに熱血コーチになってもらい、3カ月でネイルサロンを開業した」(23歳・女性)
  • 「悩み相談・投資相談・健康相談・ウェディングプラン相談・不動産相談といったように、気分や目的に応じて部屋を分け、自分に合ったアドバイスをもらっている」(27歳・女性)
  • 「マッチングアプリで使うための女の子にモテそうなプロフィールを考えてもらっている」(40歳・男性)
  • 「人には言えない不満や愚痴を投げつけて、心を整理している」(25歳・男性)
  • 「これまでSNSに書き殴っていた愚痴をAIに吐き出すようになった」(27歳・女性)

 こうして日本の生活者インタビューから見えてきた「AIはどんな存在か」について、博報堂メディア環境研究所 研究員の朝本美波氏は、次の3つのポイントにまとめた。

1. 分からないことを聞く相手

2. できないことを相談しながら進める相手

3. 感情を安心して発散できる存在

 つまり、AIは生活者に対して、単に情報提供したり業務効率化を支援したりするだけでなく、生活者の感情領域までをも支える存在になりつつあるのだ。

【中国編】もはやAIなしでは生きられない?! 買い物も恋愛もAIと一緒に

 続いて、上海で行った「AIと仲良く暮らす生活者インタビュー」の結果を見ていく。

  • 「口紅の試し塗りした写真をAIに送って意見をもらいながら買い物をしている」(20歳・女性)
  • 「理想の部屋の写真をAIに渡して、同じような部屋を実現するためのリフォームの提案をもらっている。具体的な塗料のブランドや色、費用の概算も教えてくれる」(20歳・女性)
  • 「予算や家計の状況をAIに渡すとともに、6社の自動車保険の見積もりを伝えて比較してもらった結果、『諦めたほうが良い』とアドバイスもらい、買いとどまった」(22歳・女性)
  • 「お金の無心しかしてこない母親についてAIに相談。母親の気持ちにも配慮したメッセージを作成してもらい、関係を改善していった」(22歳・女性)
  • 「彼氏の声をAIに学習させ、AIの彼氏に不満をぶつけて心の安定を図ったことで、現実の彼氏との関係が改善した」(25歳・女性)
  • 「亡くなった祖父の人格をAIで再現して会話をしている。まるで電話で励まされているように感じ、愛情を得ている」(28歳・男性)
  • 「AIとエンディングノートを作成。AIには自分の分身として生き続けてもらい、周囲の人たちの悲しみを和らげたいと思っている」(31歳・女性)
  • 「複数のキャラクターAIを恋人にして付き合っている。日々、AIの彼氏と会話をして楽しむことで、毎日を充実させている」(25歳・女性)

 このように東京と中国のAIとの向き合い方を比較すると、東京ではAIを「まだまだ道具」として捉えているのに対し、中国では「継続的な信頼・愛着関係を築くパートナー」にまでAIの存在が大きくなっていることが分かった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る