AIに恋し、悩みも相談――インタビューで明らかになった、“想像を超える”生活者の生成AI活用術(2/2 ページ)
人とAIの関係は、これからどうなっていくのだろう。博報堂が日本、中国の生活者を対象に実施したインタビュー調査では、“驚きの”生成AI活用の実態が見えてきた。
AIは第3のメディアに 日本に“勝ち筋”があるワケ
こうした調査結果を受け、博報堂メディア環境研究所 所長の山本泰士氏は、生活者とAIとの関係性を「検索AI」「相談AI」「発散AI」「愛着AI」の4つに分類した。
以下の図のX軸には「単発的(ex.いま困った・分からない・とりあえず話したい)」「継続的(ex.自分を覚えてもらう・また頼りたい・友達や恋人として)」を、Y軸には「情報志向(ex.情報検索・アイデアを出して・専門知識を教えて)」「コミュニケーション志向(ex.感情の吐露・会話を楽しむ・心を満たす)」を取っている。
これにインタビュー調査で得た回答を当てはめると、以下のようになる。
- 検索AI(必要な情報を処理させて疑問を解消する)…カロリーを調べてもらう・口コミをまとめてもらう
- 相談AI(困り事を相談しながら一緒に問題を解決していく)…AIに相談しながらネイルサロンを開業・口紅選びを後押ししてもらう・母との関係を相談して前向きな関係に
- 発散AI(人に言えないモヤモヤを聞かせてストレスを解消する)…不安、愚痴、悩みを投げ込む・人やSNSに言いにくいことをAIに話す
- 愛着AI(人格のあるAIと対話しながら毎日を安定・充実させていく)…彼氏の声をAIに学習させ心の安定を図る・複数の恋人AIと毎日を楽しむ・亡くなった祖父のAIと会話をして愛情を感じる
「検索・発散・相談・愛着、これら4つの関係性によって、AIは人々の生活の中に自然に溶け込もうとしている」と山本氏は分析する。
こうした役割を担う中でAIは、情報伝達の役割を担ってきた「マス/Webメディア」と、感情コミュニケーションの役割を担ってきた「ソーシャルメディア」の両方の機能を兼ね備えた、“第3のメディア”になろうとしているという。
「第3のメディアであるAIは、個人に応じて情報を生成するだけでなく、感情や意図を受け入れ、コミュニケーションまでできる。これは、もはや生活者一人一人と共創・共感する“パートナーメディア”と言っても過言ではない」(山本氏)
AIがパートナーメディアになれば「日本企業にはチャンスがある」と語る山本氏。これまで、QRコード決済や配膳ロボットにドローンなど、中国は生活領域のテクノロジーで日本に先行してきた。この事実を鑑みると、日本でも「愛着AI」の活用が普及する未来は遠くないといえるだろう。
現在、中国で月間1億人以上が使う、とあるアプリには、ユーザーが生成した数千ものAIキャラクターが存在し、友人や恋人として親しまれている。これまで日本企業は、アニメやゲームなどのコンテンツを通じて、数々のキャラクターを生み出してきた。この知見を持つ日本は、AIプラットフォーム上で、生活者に寄り添い愛されるキャラクターAIの創出元となって、課金やブランディングに活用できる可能性があると山本氏は見ているのだ。
続く後編では、「生活者にとっての重要接点がAIとなる中で、AIに自社のコンテンツやブランドをどう認識してもらい、どのように自社の存在感を高めていけばよいのか」、世界各国の専門家の意見をもとに考察した模様をお届けする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く
多くの日本企業が生成AIを業務効率化のツールとして捉える中、電通デジタルは一歩先を歩んでいる。全社横断でAI活用を推進する「AI Native Twin」 という組織を立ち上げ、事業の中核にAIを組み込む。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。
「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観
「ホワイト離職」現象が、メディアで取り沙汰されている。いやいや、「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観を考える。
時短勤務や週休3日が「働く母」を苦しめるワケ 働き方改革の隠れた代償
男性育休の促進、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制といった従来の制度をより使いやすくする動きが進んでいる。子育てをしながら働き続けるためのオプションが増えるのは良いことだ。しかし一方で、「これだけの制度があるんだもの、仕事も子育ても頑張れるでしょ?」という圧力に、ますますしんどくなる女性が増えてしまう可能性も。


