Sansanはなぜ、AI活用を「人事主導」で進めるのか AI利用は8割超え、業務時間9割削減の事例も(3/6 ページ)
生成AI導入を進める中で「導入したものの一部の社員しか使っていない」「業務にどう生かせばいいか分からない」といった声は後を絶たない。そんな中、Sansanは社員の99%が一度はAIを活用し、8割以上が日常的に使用するという成果を生み出している。その秘訣は、IT部門ではなく人事部門が主導するアプローチにあった。
AI導入で業務時間の9割を削減した裏側
まず、同部門の成果を紹介する。マーケティング施策の数値分析時間にAIを導入したところ、何と9割もの時間の削減に成功した。
「以前は2〜3時間かかっていた業務を、現在では15〜20分で行えるようになりました」と同部門の西家氏は語る。西家氏によると、従来の分析業務には構造的な問題があったという。
「A/Bテストを企画する担当者と、その結果を分析する担当者が別々だったんです。そうすると、企画者の意図が分析者に伝わらないことがありました。また、同じデータを見ても、メンバーは実行面の数字を重視し、マネジャーは戦略的な指標を見ます。歴の浅い社員は、そもそもどの数値から見ればいいのか分かりません。結果として、同じ施策の評価なのに、人によって結論が変わってしまうこともありました」(西家氏)
AIの導入により、分析の観点を統一でき、誰でも同じ基準で分析できるように。現在では、データのスクリーンショットをAIに共有するだけで、分析が完了する仕組みを構築している。
このような劇的な改善を、どのようなプロセスで実現したのだろうか。マーケティング部では、4つのプロセスに分けて段階的に進めていった。
まずは、そもそも全員がAIに触れる環境を作った。「マーケティング部の部員は、それぞれ対応している業務が異なります。そのため、メンバーのAIスキルを底上げする必要がありました」と西家氏は説明する。これがフェーズ1「習慣化」だ。
AIに慣れてきた段階で、次は実際の業務に生かす段階に移った。フェーズ2「簡単な業務の効率化」では、スプレッドシートの関数作成、メール文面の生成、広告文章の作成など、誰でもすぐに成果を実感できる用途から始めた。
「例えば広告文章を作る時、AIに『この商品の広告文を10パターン作って』と依頼します。すると似たようなニュアンスで少しずつ表現が違う文章が10個出てきます。その中から『これが良さそうだ』と人間が選ぶんです。ナーチャリングメール(見込み客向けのメール)でも、同じ方法を使っていました」(西家氏)
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