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残業時間が月50時間→5時間に シャツメーカーが脱・タイムカードの先に見据えるもの(5/5 ページ)

紙のタイムカードによる手作業での勤怠管理に、限界を感じる企業は多い。そんな中、日本製シャツを製造・販売するメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)は、勤怠管理のデジタル化に踏み切り、業務削減を実現した。同社にデジタル化の道のりと成果について聞いた。

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デジタル化を検討する価値は十分にある

 導入を通じて得られた学びについて、大出氏は3つのポイントを挙げる。1つ目は、システム化の範囲を適切に設定することだ。「既存業務を全てシステム化しようとすると、かえって困難になります。業務の目的を明確にしたうえで、システムで対応する部分と運用でカバーする部分を適切に分けることが重要でした」(大出氏)

 2つ目は、権限移譲の重要性だ。大出氏によると、以前は本部が全てを監視する体制だったが、現在はある程度マネジャーに権限移譲し、性善説に基づく運用に転換した。3つ目は、段階的な改善の必要性だという。大出氏は「導入時に完璧を求めるのではなく、運用しながら改善していく姿勢が必要です。実際に使ってみると、想定していなかった課題が出てくるものです」と力説する。

kamakura
導入を通じて得られた、3つの学び(編集部撮影)

 こうした学びを踏まえ、大出氏は次なるステップへの展望を描いている。将来的な目標として、全社レベルでのデータ活用基盤の構築を目指しているそうだ。「現在は各部署でシステムの最適化が進んでいますが、全社で統一されたデータを参照できる環境を作りたいと考えています。それができれば、組織全体のベクトルをよりそろえやすくなるでしょう」(大出氏)

 同社の成功事例を踏まえ、同じような課題を抱える企業に向けて、大出氏はこうアドバイスする。「システム導入作業自体は確かに大変です。しかし、短期間の負荷で長期的な効率化を実現できると考えれば、取り組む価値は十分にあります。現在は少人数で回っている企業でも、ブラックボックス化した業務を放置するリスクは小さくありません。業務の標準化とリスク分散の観点からも、デジタル化を検討する価値は十分にあると思います」(大出氏)

 メーカーズシャツ鎌倉の事例は、勤怠管理のデジタル化が単なる効率化にとどまらず、組織全体の働き方改革や経営基盤の強化につながることを示している。紙ベースの限界を乗り越え、AI活用まで視野に入れながらも人間の価値を見失わない同社の取り組みは、多くの企業にとって参考になるだろう。

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