なぜミツカンは謝ったのか? 「女性蔑視」批判をスルーできなかった、オトナの事情:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
SNSで冷やし中華の投稿が炎上したミツカンが、謝罪によりさらに炎上している。ミツカンはなぜ謝罪をしたのか。同社が守りたかったものや、背景にある事情とは……。
かつての「お家騒動」を批判するネットユーザーも
できるわけがない。ミツカンに長く勤め、「主婦の味方」というブランドで会社が成長してきたことを実感している経営幹部ほど、その意識は強いはずだ。そうなると、これが「非実在型炎上」だろうがなんだろうがとにかく、「主婦の皆さんを不快にさせたことを平謝りすべし」という経営判断になるのは当然ではないか。
なぜ筆者がそう思うのかというと、実体験によるところが大きい。筆者が「これは下手に謝罪などしたら逆効果です」と強く進言しても、「分かっていますが、創業よりお世話になっている方たちがかなり怒っていて、社長もとにかく謝れと言ってますので」などと押し切られるケースは少なくない。何を大事にして、何を守りたいのか、そしてそのためには何を犠牲にしてもいいか、というのは組織にとって異なるのだ。
このような「主婦ファースト」というミツカンのこだわりが、あの不必要な謝罪につながったのではないかと個人的には考えているのだが、もう1つ別の可能性もある。
それは「とにかくアンチを増やしたくない」という経営幹部らの切実な願いをくみ取ったということだ。
実は2023年ごろ、ミツカンは「お家騒動」が話題になったことがある。創業家に入った元娘婿が、長男の出生後に離婚を強要され、子どもと引き離されたなどと主張して法廷闘争を繰り広げていたのだ。裁判の結果、娘婿側の敗訴が決定したが、これに関する報道によって今も創業一族を批判するネットユーザーもいる。
冷やし中華のSNS投稿が炎上した際、ミツカンとしてはとにかく早く騒動を収束させ、ミツカンへのバッシング、ひいてはお家騒動を蒸し返されないようにしろという「組織内力学」が働いた可能性はあるだろう。
ただ、先ほども申し上げたように、非実在型炎上で謝罪することは、火災に燃料をぶっかけるのと同じで逆効果だ。実際、今回の謝罪後も「お家騒動」を蒸し返している投稿が散見される。
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