元外資金融のCFOが粉飾に加担、1年足らずで上場廃止 AI新興企業「オルツ」不正会計問題の根本原因(4/5 ページ)
2024年10月にグロース市場へ上場した、AI関連事業を手掛けるオルツの不正会計が問題になっている。きわめて悪質な内情は多くの関係者に衝撃を与えた。いったなぜ、こんなことが起こってしまったのか。
外資金融出身のCFOが、粉飾を巧妙にした
もちろん本件に関して最大の問題は、米倉前社長と、後任として社長に就任した日置友輔CFOの経営姿勢にあることは疑う余地がありません。
2014年に設立し、2015年以降は積極的にVCなどから資本調達を繰り返し、不正が始まったとされる2021年6月時点で約27億円に達していました。業績が頭打ちの中で、米倉前社長の上場への意欲が強すぎるがゆえに、氏がVCの撤退を恐れ粉飾に手を染めたと考えられるところです。
さらなる問題は、2021年10月に入社した日置氏が、米倉氏から不正スキームの全容を知らされ、あっさりとこれに加担してしまったことでしょう。
日置氏は、米モルガンスタンレーの日本オフィスでIPOやM&Aに関わった経歴の持ち主であり、投資家や証券会社がどこを注視するのかについて熟知していました。粉飾の上塗り役としてこれ以上ない存在であったといえます。日置氏は、VCや幹事証券会社、あるいは東証に対して、虚偽説明、提出資料の改ざんなどを繰り返し、疑われる余地を与えなかったのです。
日本取引所グループの山道裕己CEOは定例記者会見の席上で本件についての意見を求められ「上層部がみんな一緒になって、意図的に悪意を持ってだまそうとした場合には監査法人ですら見抜けない。それをもって審査の妥当性がないとは全く思わない」とオルツ不正の悪質性を強調し、東証が不正を見抜けず同社を上場させたことの弁明をしています。この意見は東証だけではなく、VCも幹事証券会社も同じように感じているのではないでしょうか。
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