元外資金融のCFOが粉飾に加担、1年足らずで上場廃止 AI新興企業「オルツ」不正会計問題の根本原因(5/5 ページ)
2024年10月にグロース市場へ上場した、AI関連事業を手掛けるオルツの不正会計が問題になっている。きわめて悪質な内情は多くの関係者に衝撃を与えた。いったなぜ、こんなことが起こってしまったのか。
「応援ムード」に要注意
社長が主導し、本来相互けん制を働かせるべき社内取締役も結託した今回のような事態は、一度悪い方に進んでしまうと容易に歯止めが効かない状況を生み出してしまいます。社外取締役や監査役にしても、両役職を務めたことのある筆者の経験から申し上げれば、毎日経営者と顔を突き合わせているわけではなく、自ずと限界があるように思います。できることは、経営者、経営陣との個別面談の頻度を上げて、悪い野心家ではないかなど人物像をしっかりと把握することに尽きると思うのです。
もう一つ、上場を視野に入れている新興企業の周囲は応援ムード一色に染まりやすく、性善説が前提となって動き、悪の兆候を見逃してしまう、ということもあるように思います。
今回の件では、売り上げの約半分を代理店1社が担っていること、toB商材でありながら広告宣伝費が年間売上の75%も占めていること、そしてその45億円もの資金を宣伝広告に使っていながら媒体やネット上でそれに見合った印象がないことなど、疑問を感じてしかるべき部分は多々あったはずです。やはり性善説をベースとした応援ムードが、これらの疑問を打ち消してしまったのではないかと思うのです。
今回の件は、単なる一上場企業の粉飾決算問題にとどまらず、新興企業監査を引き受ける監査法人の適否、新興企業応援団の姿勢の在り方、上場審査厳正化の要否など、多くの課題を投げかけた事由といえます。上場を目指す新興企業における各関係者、および関係機関の早急な対応策検討が望まれるところです。
著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
オルツの粉飾決算 見抜けなかった東証・証券会社の「重い責任」
AIによる議事録作成サービス「AI GIJIROKU」を展開していたオルツが、東証グロース市場への上場からわずか10カ月で破綻した。報告書では、取引所と主幹事証券は一貫して「虚偽の報告を信じた被害者」としての立場で記載されているようだが、これらの関係者に対しても改善が求められる。
AIに恋し、悩みも相談――インタビューで明らかになった、“想像を超える”生活者の生成AI活用術
人とAIの関係は、これからどうなっていくのだろう。博報堂が日本、中国の生活者を対象に実施したインタビュー調査では、“驚きの”生成AI活用の実態が見えてきた。
