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きっかけは「やばくないですか?」の一言 アトレのAI活用リーダーが語る、全社を巻き込むコツ(1/5 ページ)

一部の社員だけがAIを使い、組織全体への浸透が進まないという壁に直面する企業も少なくない。そうした中、アトレは3カ月余りでGemini利用率95.5%を達成した。成功の秘訣とは?

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 労働力不足が深刻化する中、多くの企業がAI導入による業務効率化を急いでいる。しかし、一部の社員だけがAIを使いこなし、組織全体への浸透が進まないという壁に直面する企業も少なくない。「AIは便利だが、現場にどう定着させればいいのか」「投資に見合う成果をどう測定すべきか」――そんな悩みを抱える経営者や推進担当者も多いだろう。

 こうした課題に対し、JR東日本グループで駅ビル事業を展開するアトレ(東京都渋谷区)は、独自プロジェクトである「AIメンター」戦略で一つの解を示している。2025年4月にGoogleの生成AI「Gemini」を、パート・アルバイトを含む全従業員向けに導入し、わずか3カ月余りで利用率95.5%を達成した。プロジェクトを主導したアトレ川崎店の山本純平氏に、成功の秘訣と今後の展望を聞いた。

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右:アトレ川崎店 山本純平氏(同社提供)

「AIやばくないですか?」の一言から始まった

 アトレがAIメンター戦略を導入するに至った背景には、多くの企業と同様、労働力不足という課題があった。都内中心に32館を運営する同社は、2030年に向けて中野や板橋などへの新規出店を計画している。事業を拡大するためには、労働力だけでなく、社員一人一人のマーケット分析力や営業力の高度化も必要不可欠だ。そこで山本氏が注目したのが、生成AIだった。

 生成AIの活用目的では「業務効率化」がよく聞かれる。しかし山本氏は、この方向性に疑問を感じていたという。「業務効率化だけを追求すると、将来的に人がいらなくなってしまう。それでは寂しいじゃないですか」(山本氏)。そこで山本氏は発想を転換し、人的資本の拡充、つまり社員の能力を広げる方向で生成AIを導入することにした。

 AIメンター戦略が正式にスタートしたのは2024年10月。きっかけは「社員本音祭り」という、社員が本音を持ち寄って経営陣にぶつけるイベントだった。2023年のこのイベントで、当時、本社の総合企画部に所属していた山本氏は勇気を出して提言した。――「AIやばくないですか?」

 このストレートな問いかけが社長の心を動かし、山本氏は社内でAIを推進するプロジェクトリーダーに任命された。山本氏を中心に、企画部側とシステム側の計8人でプロジェクトチームが発足。「本音祭りは提言したものを実現するまでがイベントの趣旨」という社風も後押しとなり、全社を巻き込んだ取り組みへと発展していった。

 数ある生成AIの中からGeminiを選んだ理由について、山本氏は2つ挙げた。1つ目がGoogle社のマルチモーダル機能など、さまざまなツールの裏側にAIを組み込める将来性。2つ目がアトレが2年前から導入していたGoogle Workspaceとの親和性だ。「Geminiはアドオンのような感じで、気軽に導入できました」と山本氏は振り返る。

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提供:ゲッティイメージズ

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