きっかけは「やばくないですか?」の一言 アトレのAI活用リーダーが語る、全社を巻き込むコツ(5/5 ページ)
一部の社員だけがAIを使い、組織全体への浸透が進まないという壁に直面する企業も少なくない。そうした中、アトレは3カ月余りでGemini利用率95.5%を達成した。成功の秘訣とは?
AI時代の組織マネジメントのコツ
山本氏自身もAIによって新たな能力を獲得した一人だ。テナントの持続可能性を検知するシステムの開発プロジェクトに参加した際、従来であれば外部の開発会社に依頼していたような作業を、Geminiを活用して内製化することに挑戦。プログラミング経験がなかった山本氏が、AIの支援を受けながらコードを書き、依頼するよりも半分の費用で、かつ想定の半分の期間でテスト版まで完成させることができた。
「これからの時代は、非エンジニアでもAIを使えば、ある程度のプログラミングができるようになります。しかし、ここに組織マネジメントの盲点があると思うのです」(山本氏)
例えば、部下がAIを使ってプログラミングスキルを身につけ、システム開発までできるようになっていても、上司がその変化に気付かなければ、新たな能力は組織の中で埋もれてしまう。「プログラミングに限らず、部下がAIを得たことで何ができるようになったかを、マネジメントが正しく見極めることが組織的な活用としては大事です」と山本氏は力を込める。
多くの企業で、AIによって社員が急速に新しいスキルを獲得している一方、その変化が適切に評価・活用されていない企業も少なくない。だからこそ、Geminiステータスボードをマネジメントツールとして進化させ、社員の成長を多面的に把握できる仕組みづくりが重要になるのだ。
アトレの挑戦は、AI導入を単なる効率化ツールとしてではなく、社員の能力を拡張し、組織文化を変革する「伴走者」として位置付けた点で画期的だ。全社員への展開、ゲーミフィケーションを活用した可視化、身近な活用事例の共有など、独自の工夫により95.5%という高い利用率を実現した。「100の街があれば、100の顔のアトレ」というミッションの実現に向け、AIという伴走者を得た社員一人一人が、より創造的で付加価値の高い業務にシフトしていく。その先に、アトレが描く「街の個性を創り出す」未来がある。
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