セブンがぶち上げた「1000店舗増」計画は実現するのか “勝算”の背景を探る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
コンビニ1位のセブンが、今後国内で1000店舗を増やす計画をぶち上げた。果たして実現するのか。
万博での取り組みにもヒントが?
カウンター周りのフードやドリンクの強化は、大阪万博の店舗でも試みており、来場者の数に対して飲食店が足りない特殊な条件下ではあるが、好調に売り上げていると見受けられた。万博内の2店舗では、店で焼いたピザやメロンパン、チョコクッキーなどを販売しており、SIPストアでも概ね同じものを売っていた。
東京や大阪、名古屋、福岡のような大都会はともかく、ちょっと郊外、地方に行くと何かを食べるにも、飲食店がないエリアはたくさんある。飲食店の代用となるサービスの強化により、新しい需要を創出するのは可能だ。先述の芝浦海岸通りにある店ではベーカリーを併設し、焼き立てパンを売っている。これもヒントになるだろう。
さらに、全国約100店での検証期間を終えて、紅茶マシン「セブンカフェ ティー」の本格展開が始まる。2026年2月に2000店、2027年2月に1万店を目標に掲げる。
2013年に導入して全国的なブームを起こした「セブンカフェ」ほどのインパクトがあるかは疑問だが、アフタヌーンティーのブームもあり、女性客を広げる効果が見込める。店で焼いたピザ、ベーカリーなどと組み合わされば、新しい需要を創出できるだろう。
セブンの国内店舗数は2025年7月末現在で2万1770店。ここから1000店増やすのが不可能とまでは思わないが、コンビニ空白地帯をあぶり出す立地開発、経営を担うオーナーの募集と教育、人手不足を解消するアルバイトの確保に、これまで以上に注力する必要がある。特に人材の確保は、デリバリーサービスの「7NOW」を本格化させるのであれば急務だ。
加えて「セブンカフェ」「サラダチキン」「金の食パン」「お店で揚げたカレーパン」など、これまで生み出してきたヒット商品に匹敵するくらいの、超絶ヒット商品を連発するくらいでないと、到底成し遂げられないだろう。
デイカス社長は、米国でセブンのフランチャイズ店を経営する家庭で育った。店舗経営の面白さ、厳しさを肌感覚で知る稀有な人物だ。ぜひDNAに刻まれた“セブン愛”で、困難を乗り越え、コンビニの王者としてのブランド力を取り戻して欲しい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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