たかが数分、されど数分 接客の大敵「待ち時間」をファンケルはどう解決した?(3/3 ページ)
店舗接客の悩みの種である「待ち時間」。スタッフにとってもお客にとっても、短いに越したことはない。この待ち時間について、ファンケルは徹底した現場目線で解決を図った。
接客アプリ導入後、再来店率も向上
アプリ導入後、スタッフからは「待たせる時間が減ったことで接客時間を短縮できた」「アプリでさまざまな情報を確認しながら接客できるので、コミュニケーションの質が上がり、接客の時間は短くなったが、内容は濃くなった」といった好評の声が多く寄せられているという。
髙井氏によれば、接客アプリ導入後の再来店率も上がっているという。「化粧品を買うとき、『前に買った商品の色って何だっけ?』というような会話がよくあります。これまでは『お調べします』とお待たせしていたところ、接客アプリを導入したことで即座に確認でき、会話が途切れることなく接客を続けられるようになりました。こうした今まで以上に寄り添う接客ができるようになり、顧客の満足感が高まったことが、再来店率の向上につながっているのではないでしょうか」(髙井氏)
接客アプリの課題について、大塚氏は「スタッフによって利用状況にバラつきがある」ことを挙げる。「若い世代のスタッフだから使いこなせているか、というとそうでもなく、年代は関係ありません。接客アプリを使ったことによるメリットを体感した人から、使いこなせるようになる傾向があります」(大塚氏)。今後は、使いこなせている人の実例を水平展開するなどし、スタッフを支援する方針だ。
今後について、髙井氏は「接客アプリにより、顧客との接点をデータ化できました。これを次の接点づくりにどう生かすか検討したいです」と期待を込める。
店舗接客では当たり前の待ち時間に対し、ファンケルは現場視点を徹底することで解決策を見いだした。同社の取り組みは、現場目線をどう生かすか悩む企業にとって参考になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ファミマ、AIが発注を最適化→週6時間の業務削減 「勘と経験」頼みをどう脱却した?
店舗スタッフの経験と勘による判断に頼るコンビニの発注作業には、さまざまな課題がある。こうした課題に対し、ファミリーマートは生成AIが最適な発注数を自動で提案するシステム「AIレコメンド発注」の運用を開始。同社に開発の経緯や導入後の成果を聞いた。
「失敗したデータこそ宝」 AI面接官に全社向けAIツール、キリンHDが気付いた全社DXの真髄
AI面接官に全社向けAIツールと、全社でDXを推進するキリンホールディングス。さまざまな取り組みから同社が学んだ、全社DXの真髄とは?
DX最大の壁は「過去の成功」──花王が“必勝パターン”をあえて捨て、大ヒット商品を生み出せたワケ
時には過去の成功体験を捨て、思い切って新しい手法を試さなければならない。こうした学びを与えてくれるのは、経済産業省と東京証券取引所が「DX注目企業2025」に選定した花王の事例である。同社の常務執行役員で、デジタル戦略部門を統括する村上由泰氏に話を聞いた。
「ゲームみたい」新人のやる気が上昇 オリックス生命コールセンター研修のウラ側
日々さまざまな問い合わせが寄せられる生命保険会社のコールセンター。オリックス生命保険は5月から、コールセンター部門に配属される新入社員の研修を大幅にアップデートする挑戦を始めた。同社に話を聞いた。
