国内の製氷市場が拡大傾向にある。帝国データバンクの調査によると、2024年度の市場規模は前年度比2.9%増の691億円。コロナ禍で需要が急減した2020年度(589億円)から、4年連続で拡大した。
猛暑&インバウンドが追い風も 厳しい収益
市場拡大の背景には、記録的な猛暑による冷やす需要の増加がある。家庭向けでは、袋詰めの「かちわり氷」やコンビニコーヒー向け氷の需要が伸長。家飲み需要の定着により、「アイスボール」など付加価値の高い製品も売り上げを押し上げた。
業務用では観光やインバウンドの回復、祭りやイベントの再開が追い風となり、飲食店や露店からの引き合いが増加した。こうした需要増を受け、冬季も製造を続けて夏季出荷に備える動きもみられる。
一方、収益面では厳しさが続いているようだ。電力や人件費、包装資材、輸送コストが上昇し、約4割の企業が「減益」となった。工場の老朽化による設備更新負担も重く、販売価格を引き上げたものの、再度の大幅な価格転嫁は難しく、「増収減益」の傾向が目立った。
最近では、フルーツを使った高級かき氷やカクテル用の高品質氷など、多様なニーズに対応する製品も登場している。帝国データバンクは「コスト管理など課題は残るが、今夏の猛暑を背景に2025年度も市場規模は拡大基調が続くと見込まれる」と分析した。
調査対象は食用・産業用の氷を製造販売する企業、業績などのデータは、2025年8月時点における帝国データバンクが保有する企業概要ファイルや企業信用調査報告書、外部情報などを基に集計した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
酷暑の救世主となるか? シャープの“飲める氷”を作る冷蔵庫の実力
シャープの“飲める氷”を作る冷蔵庫が、酷暑の救世主となるかもしれない。工事や建設現場、スポーツ施設など、暑熱対策が難しかった環境で活動する企業にとっては、身近な解決策になりそうだ。担当者にインタビューした。
6月から「熱中症対策」が義務化 各社の対策から見える課題
6月1日から、労働安全衛生規則改正で条件を満たす作業をおこなう企業に対して、熱中症対策が義務付けられた。帝国データバンクは「熱中症対策の義務化」について調査を実施した。
「定時以降は空調が停止」──酷暑の今、熱中症対策がデスクワークでも重要なワケ
年々増え続けている、仕事中の熱中症による死傷災害。熱中症といえば、屋外で働く建設業や警備業などがイメージされるが、デスクワークなども無関係ではない。
「猛暑でも出社せよ」約8割 社員のやる気にどれほど影響するのか
暑さが本格化する中、6月からは職場における熱中症対策が義務化された。パーソルキャリア(東京都千代田区)が運営する調査機関「Job総研」が夏の働き方についての調査を実施した。


