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「すき家」はなぜ、異例の値下げに踏み切ったのか 背景と勝算を探る(3/3 ページ)

すき家が値下げを発表し、いわゆる牛丼御三家のうち並盛価格が最安値となった。どのような勝算があるのか。

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マクドナルドの前例から考えると……

 4月以降、客数減が続くとはいえ、値上げにより客単価は前年比でおおむね7〜10%を推移しており、既存店売上高も前年比で同水準を維持している。ゼンショーホールディングスの2025年3月期における主要3セグメントの業績は、すき家以外の事業も収益をしっかり生み出しており、9月以降の値下げですき家事業が悪化しても、他事業でカバーできそうだ。

 グローバルすき家→売上高2958億円、営業利益245億円

 グローバルはま寿司→売上高2485億円、営業利益214億円

 グローバルファストフード→売上高3141億円、営業利益292億円

 このうちグローバルファストフード事業は、海外のテークアウト寿司店を主体とする事業であり、北米を中心に約1万店舗を展開している(今期は「グローバル中食」セグメントに移行)。ゼンショーホールディングスは国内ではま寿司やファミレス業態を開拓し、海外ではM&Aによりテークアウト寿司店を取得した。すき家の信頼は落ちたままだが、多角化に救われたといえる。

 牛丼の値下げ後は安さ目当ての客が集まるかもしれないが、抵抗感を持つ客の呼び戻しには至らないと筆者は考えている。並盛価格は松屋と10円しか変わらないため、効果は限定的だろう。抵抗感が薄れるまで時間が過ぎるのを待つしかない。

 外食の不祥事で参考になるのが、2014年に発覚したマクドナルドの食品消費期限切れ問題だ。海外から輸入していた商品で消費期限切れ食肉を使用していたことが発覚し、世界中の店舗に影響した。

 日本マクドナルドホールディングスでは、2014年12月期の業績は売上高2223億円、営業利益がマイナス67.1億円となり、翌2015年2月期も売上高1895億円、営業利益がマイナス234億円となった。業績回復に数年を要したことを考えると、すき家も客足が戻るのは1年以上先になるかもしれない。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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