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すき家“23時間営業”が問い直す、外食チェーンの限界と未来小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)

異物混入問題で“24時間営業”を見直したすき家。その背景には、外食チェーンが抱える構造的な課題と、人手不足時代における「働かせ方」の限界があった──。

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筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)

みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。

主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。


 外食大手ゼンショーの牛丼チェーン「すき家」は、異物混入事件への改善策として、2025年4月から1時間の清掃時間を設け、それまで原則としていた24時間営業を23時間営業に切り替えた。同様に、ゼンショーグループの丼・うどんチェーン「なか卯」も、5月から23時間営業となっている。


深夜帯の1時間を清掃に充てるようになったすき家(編集部撮影)

すき家による「営業再開と今後の対策についてのお知らせ」(公式Webサイトより)

 この混入事件が明らかになった2025年4月、すき家の月次売り上げは前年同月比で全店ベース▲20.2%、既存店▲7.2%、客数▲16.0%(衛生対策休業期間を除いて算出)と大きく落ち込んだ。今回の対策が消費者に評価されるかどうかは、6月第3営業日(5月月次売上速報)の結果を待たねばならないが、顧客の信頼回復には再発防止が確認できるまでの相応の期間が必要となるだろう。

減少する24時間営業

 ちなみに、この話を聞いて再認識したのは、牛丼チェーンではいまだに24時間営業が主流であるという点だ。

 コロナ禍で大きな打撃を受けた外食業界の売り上げは、コロナ終息後、急速に回復し、ほとんどの業態でコロナ前の水準を取り戻している。

 しかし、アルコール比率の高い業態(飲み屋業態)は7割程度までしか戻っておらず、その影響もあって深夜帯の人流もコロナ前に比べ大幅に減少しているようだ。このため、外食の各業態はコロナ後に営業時間を延長してきたが、深夜帯の人流減少もあり、24時間営業に戻す企業は多くない。牛丼チェーンのように24時間営業が復活している業態は、実のところそれほど多くないのである。

 すき家は24時間営業が原則である。すき家は2014年の「ワンオペ問題」が発生した際、1167店舗の深夜営業を休止し、24時間営業の店舗は700店ほどとなった時期もあったが、コロナ後には復活し、ほぼ全店が24時間営業となっていた。他の牛丼チェーンも24時間営業している店は多く、店舗検索で「24時間営業」と指定して検索すると、吉野家は317店/1248店、松屋は832店/1121店と、かなりの数が24時間営業を行っている。

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