すき家“23時間営業”が問い直す、外食チェーンの限界と未来:小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)
異物混入問題で“24時間営業”を見直したすき家。その背景には、外食チェーンが抱える構造的な課題と、人手不足時代における「働かせ方」の限界があった──。
24時間営業は採算が取れるのか?
しかし、ファミリーレストランでは、すかいらーくグループ、ロイヤルグループなど24時間営業はほぼなく、コロナ後に営業時間を繰り下げる動きがあったものの、人手不足の時代に24時間営業を再開することには否定的なようである。では、なぜ牛丼チェーンはいまでも24時間営業(実質)を行っているのだろうか。
牛丼チェーン各社は大手であり、その業態は複合化しているため、上場企業として財務情報を開示してはいるものの、牛丼チェーンのみの損益構造を分離して検証することはできない。また、営業時間帯別の売り上げデータも開示されていない。ただ、概算で考えてみると、深夜帯の営業でも採算は合っているようだ。
店舗のランニングコストのうち、賃料や冷蔵電気代といった設備関連の固定費は、店を開けていても閉めていても変わらないため、深夜帯の採算は主に人件費に左右される。すき家ではかつて深夜のワンオペが問題となったが、現在では2〜3人での運用が可能とされている。すき家の深夜時給は検索すると1625円と出ており、1時間当たりの人件費は3250円〜4875円となる。
牛丼屋の粗利率を7割程度と想定すれば、おおよそ5000円÷70%=約7000円の1時間当たりの売り上げがあれば、採算は取れる計算だ。実際に深夜帯で4万〜7万円の売り上げがあるという声もあり、この水準であれば利益も出る。そして、なにより客数の少ない時間帯に清掃や材料管理、翌日の準備などが行えるので、24時間営業でも損はしないと考えられる。
ただし、この前提は、深夜のアルバイトによる2〜3人体制というオペレーションであり、非正規雇用のスタッフが確保できるという環境下で成り立っている体制だという点は忘れてはならない。
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